○囲碁AI新時代を読む

bqsfgame2017-11-16

王銘琬先生の棋書です。
途中まではすごく面白いです。AIにも棋風があること。その棋風が、AIが使用している内部の手法によって発生していること。AIは人間を追い越したと言えるが、弱点があること。それは、手法上のどういう課題から発生しているかということ。
かなり技術書に近いテイストです。
残念なのは、最後の章で観念論的な話しを持ち出してきて、そこまでの内容と余りに異質な議論を唐突に展開することです。共感度という指標を持ち出してきて、そういう指標が議論されてこなかったが昔からあったのではないかという主張には、あまり共感できませんでした。
AIが人間よりも強くなったと率直に認めると、一つ大きな問題が発生します。AIの打つ手の方が精度が高く、AIの残す棋譜の方が質が高いとすれば、プロ棋士は何を持ってお金を払ってもらえるのかです。
思考実験として、名人戦リーグにアルファ囲碁が参戦したとしましょう。物珍しさだけでなく、強さや、棋譜の質の高さと言う面でも、その棋譜が人間同士の棋譜よりも注目を集め購買部数に寄与するとすれば、新聞社は極論すればAIソフトを多数参加させたリーグ戦を開催する方が、従来の人間棋戦を主催するより良いことになります。そうすると、人間のプロ棋士は、何を持って棋譜に対価を得ると主張できるのか?です。明言こそ避けていますが、銘琬先生はこの点を認識していて、そこで共感度なる指標を持ち出してきたのかなと感じました。
プロ棋士よりも強くなってしまったAIソフトと暮らしていくと言うことは、そういうことなのでしょう。