☆火星のタイムスリップを読む

bqsfgame2017-11-19

「火星人先史」からの火星繋がりです。
フィリップKディックの代表作の一つです。しかし、個人的には「ユービック」、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」よりも少し落ちると思います。あまり再読した記憶がなく、もしかしたらまだ二読目かも。
火星を舞台にしていますが、登場人物が多く誰が主人公か判りにくい作品です。たぶん、水利労組組合長のアーニー・コットなのでしょう。彼は火星でボトルネックとなる水資源を牛耳る大物ですが、出身は一鉛管工です。折から火星のFDR山付近に国連が新植民団地を作るという話しを聞きつけますが、出遅れてしまいます。出遅れを取り戻すチャンスとして、自閉症児のマンフレッドと、火星先住民のブリークマンの力を組み合わせてタイムスリップすることを試みます。すごくざっくり言うと、そういう本線です。
しかし、彼の愛人、彼が見込んで雇う修理工、彼が使っている密貿易業者が登場します。詳細は現物を読んでいただくとして、それらの人間関係が複雑に絡み合っています。
書かれた年代が「ユービック」などよりも5年ほど早く、ストーリーには大きな破綻は見られません。良くまとまっています。そこをどう評価するかが、好みの分かれる所でしょう。小説としては良いと思いますがディックらしさが足りないとも見えます。
最終的に、コットはタイムスリップに成功しながら思いを達せられないばかりか死んでしまいます。逆に、利用されたかに見えたマンフレッドは、自分の居場所を見つけます。修理工のジャックは、崩壊しかけた家庭の復旧に成功します。多くの人が幸せになる点でも、ディック作品の中では異色かもしれません。
久しぶりに読んだ感想としては、安心して読める面白い作品でした。他にもディックを再読してみたくなりました。