○夢幻惑星を読む

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川又千秋です。初読。

「天界の狂戦士」が良かったので、未読の川又作品から消化です。

我々は「自分たちが現実で、夢を見るとそれは実在しない」と考えていますが、実は逆ではないかというお話しです。つまり、我々は夢の世界の住人が見ている夢に過ぎないと言う。

世界各地に発生した異界のエリアが増殖し、そこから擬体(モドキ)が徘徊してくると言うSFとホラーの折衷のような設定。

主人公カップルが、このエリアに拉致されスパイとしてこちらに戻ってきたと言う展開から、あれよあれよという間に月に脱出する計画や、米ソ間の疑心暗鬼が限界に達して核戦争になってしまいます。

設定上、意図的に論理的説明が端々まで行き届かない書き方になっており、幻想文学に近い仕上がり。

圧倒的なリーダビリティで、この時期の川又千秋のトクマノベルズ作品に共通の疾走感があります。

完成度や格調と言う点では他にもっと良い作品があるので、再版されないのは止むを得ないかも知れません。が、川又千秋全盛時の一作ではあります。