☆奇術師を読む

クリストファー・プリースト世界幻想文学大賞作品。

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文庫出版が2004年ですので、その時に読んだと思いますから15年ぶりでしょうか。

再読のキッカケは、「グレーテストショーマン」を見て、映画「プレステージ」を思い出したから。そこから、まず原作を再読しようという思考回路の流れです。

改めて読んでみて、非常に難解な構築物だと思いました。

視点人物の取り方から奇術的な趣向が凝らされていて、意図的に判りにくく書かれています。視点人物が、どこまで本当のことを書いてくれているかが、まず疑わしいのです。

基本的には同時代に活躍した二人の一流奇術師が、それぞれ独自に開発した「人体瞬間移動」の種を探り合う話しです。

そして、両者の長年に渡る確執。

両者の間で寝返る女性アシスタント。

二人の奇術師を取材する編集者。

さらに、当代の有名人物であるテスラ博士。

何と言うか、本当に複雑精緻な構造物を創り上げたものです。

プリーストは、寡作ではあるものの少なからぬ傑作をものにしています。しかし、その中でも本書が最高傑作だと改めて感じました。他には、「逆転世界」、「スペースマシン」を、個人的には高く評価しています。

処女長編の「伝授者」は、良く判らなかったのですが、一度、再読してみたいなぁと思っています。一拍置いたら、取り組んでみようかと思います。