映画館です。
バットマンのTVシリーズ以来のファンとしては、行かずばなりますまいて。
ただし、今回はバットマンは出てきません。ブルース・ウェインは、子役として登場するだけです。そうか、ジョーカーとは、そういう年齢差なのですね、今度の世界では。
後味が悪いという世評がありますが、そこは噂に違いません。
そもそもバットマンに登場するヴィランの生い立ちは、どれも後味の悪い物語ばかりなのです。ヴィランに視点を当てて、なぜ彼がヴィランになったかを語ろうとすれば、多かれ少なかれ悲しい物語になります。
今回は、社会で虐げられている精神障害の弱者が、悪のアイコンになるまでの物語です。
主人公のアーサーは、神経障害でささいなことで笑いが止まらなくなってしまいます。そのために周囲から気持ち悪がられクラウンのバイトでその日暮らしで老母の面倒を見ながら暮らしています。
そんな彼は、ある日、地下鉄の中で三人の酔っぱらったエリート社員たちが一人の女性をからかっているのを見て、突然、笑い始めてしまいます。女性はその隙に逃げ出し、男たちは代わりにアーサーをからかい始め、それは一方的な暴行にエスカレートします。
その時、彼は友人に護身用にもらったリボルバーで男たちを撃ってしまうのです。
このシーンが典型的ですが、アーサーが人を殺す残虐シーンでは、彼の視点から見て殺す理由がある場合ばかりです。
殺す理由が薄い場合には、殺したらしいと推定できる演出がされますが、凶行シーンは映りません。隣人の黒人女性、ソフィー(ザジー・ビーツ)。最初と最後に出てくるカウンセラー(シャロン・ワシントン)。特にソフィーをなぜ殺すのかは説明不足な印象を受けました。
そもそもなぜ彼がリボルバーを持っているかにも一逸話あります。
また、彼が面倒を見ている老母が、実は実母ではなく、また幼少期の彼を虐待していたという事実も明らかになっていきます。
クライマックスでは、彼が長年あこがれていたTVショーに出演しますが、そこであこがれの司会者(ロバート・デニーロ)に否定されて射殺してしまいます。
ところが、エリート社員を射殺した事件は、「弱者によるエリートへの反抗」と一部では持ち上げられ、街の弱者たちは彼の味方となって大暴動を起こします。
この暴動の中で、市長候補だったトニー・ウェイン夫妻は、息子の目の前で射殺されてしまいます。そして、息子は犯罪と戦うことを決意し、やがてバットマンになるのですが、それは今回は関係のないお話しです。