眉村卓追悼:☆遥かに照らせを読む

懐かしいです。

収録作のほとんどは、「SFアドベンチャー」の読み切り短編。一部、「SFマガジン」があります。この頃は高校生だったので、SF雑誌を端から端まで読んでいました。

お気に入りの順番にコメントします。

「トグシノ」は、一種のタイムパトロールもの。晩年を迎えた主人公が、生きがいを求めてタイムパトロールの外勤に志願。遭難した先は、時間が三日月湖のように取り残されて3日間ごとにスタートに戻ってループする奇妙な世界というお話し。ちなみに、トグシノは主人公の名前です。

「ペジの泥沼」は、ペジという異星生物だという砂を混ぜて作られた願いを叶える人形が各家庭から逃げ出す怪現象で始まります。逃げたペジたちが合体して人間を襲う快足獣になるので、これを退治する志願兵組織が結成されます。しかし、倒した複数の快足獣の死体は、やがて合体して八本足の巨大な怪物に。この怪物は人間たちを、社会規範から解放していきます。

「ポドゲギャ」は、ごく短期間だけ熱狂的な繁殖期を持ち、その後は成熟して落ち着いた人生を送る異種族、ポドゲギャの物語。この繁殖期ポドゲギャが、成熟期ポドゲギャの存在を否定して叛乱を起こします。

「遥かに照らせ」は、抜き打ちで人生計量をされ、規定値に満たないと消滅させられてしまうという奇妙な世界。主人公は人生計量を数日後に予告され、計量値を上げるために非日常的な体験をしようとします。

トライチ」は、正攻法で獲物を狩ることを誇りとする種族の物語。しかし、そこに謀略を用いて要領よく狩りをしようとするものが現れて追放します。しかし、追放した謀略を用いる者たちが群れて攻撃してきたらどうなるのかという不安を主人公は感じて終わります。

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全体として、異種文化テーマ作品集とも言うべきでしょうか。なんとなく、単語の独特の音の響きの選び方と言いジャック・ヴァンスを想起させます。もちろん、良く言われるように「ヴァンスのように書けるのはヴァンスだけ」なので、そこはどこまでも眉村卓テイストではあるのですが。