フロントランナーを見る

WOWOWのW座です。

ヒュー・ジャックマン主演と言うので見ました(笑)

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題名では判りにくいですが、ゲーリー・ハートの実話です。

なんと小山薫堂でさえハートを良く知らないというのには驚きました。

1988年の大統領選挙、レーガンの後を決める選挙です。

民主党候補を決める予備選では、前回も立候補して知名度を確保していたコロラド州選出のハート上院議員が先頭走者(フロントランナー)と目されていました。この選挙では、レーガン大統領がイランコントラ事件で退いたため民主党勝利が予想されており、事実上の大統領選挙とされていました。

ハート上院議員は、「ニューアイデア」を提唱し、西部出身の初の民主党大統領候補を目指しました。そして、実際に支持率でも好調なスタートを切りました。

しかし、女好きという評判のある同候補は、その点を記者質問されて、「疑うなら尾行でも何でもすれば良い」と記者に反発。これを受けてニューヨークタイムスにライヴァル心を燃やすマイアミヘラルド紙は本当にハートを尾行、一人の選挙スタッフ応募者の女性が事務所に入ったまま、その夜には出てこなかったことを記事にします。この「不倫の疑い」報道は選挙戦の流れを大きく変えてしまい、結局、ハートは選挙戦からの撤退を余儀なくされました。

というのが実話です。

この事件の結果としてアメリカマスメディアは、将来有望な政治家のプライベートをパパラッチのように報道して潰すことは国益を損なったと反省しました。

この反省の結果が、クリントン大統領の不倫事件(モニカ・ルインスキー事件)でのマスメディアの報道に影響を与えたと言われています。

閑話休題

と言うことで、当時としては大きな事件であり、ハートの知名度はかなり高いと思っていたのですが、筆者の一つ下でしかない小山薫堂氏が良く覚えていないというのには驚きました。

もっともハートのニューアイデアは、斬り込んでいくと具体的な中身に乏しかったという意見もあり、本当に彼がそんなに優秀な政治家だったかどうかには疑問もあるようです。

で、映画の方ですが、1984年の民主党予備選で撤退するシーンから始まり、88年の予備選で撤退するシーンで終わります。

不倫事件が事実だったかどうかについては意図的に曖昧にしてあります。しかし、最後のテロップで、ハート夫妻はその後も結婚関係を維持した‥と出てくるので、少なくともマスコミの過剰報道が正しくなかったという印象を与えています。

踊らないドキュメンタリーであり、映画としてはノンエキサイティングです。正直に言って、かなり眠い出来栄えでしょう。まぁ、もう一回見ることはないと思います。

最後に、民主党予備選にはデュカキス:マサチューセッツ州知事が勝利しました。作品中で他の候補を値踏みするシーンがあるのですが、「デュカキス? ポスター映えしない名前だな」と切り捨てられています。なお、結果はブッシュ前副大統領が勝利し、民主党は流れを持っていながら予備選で大きな亀裂を生んで修復に失敗したと言われています。

もう一つだけ、ハート上院議員は撤退時点で(結果の出ていた)ミシシッピ以西の全州で勝利していながら撤退しました。これも前代未聞のことでした。その時に彼は撤退の理由を、家族や大切な人たちをマスコミから守るためと述べました。前述した通り、このことはマスコミの報道のあり方に大きな一石を投じました。