☆破滅の王を読む

bqsfgame2019-01-05

上田早百合の直木賞候補作です。
惜しくも最終選考三位となり、受賞はなりませんでした。
しかし、これを選考に残したのはさすがです。
舞台は日中戦争当時の上海租界です。この時点で個人的には、泣きが入ります。
題材は、B型兵器の開発です。いわゆる石井部隊も登場してきます。しかし、本作品はフィクションですので、そちらは伏線程度に扱って、架空の別のウィルスの話しになります。
生物兵器の開発と、それに対する治療法の確立が表裏一体のものであり、その最前線で技術者たちがどう葛藤しているかを重厚な筆致で描きます。
読み応え十分の作品ですが、これを入院中のベッドで読んでいると、ちょっと怖いお話しではありました。
近い将来、上田先生が直木賞を取れるかどうか、ちょっと楽しみにしています。