戦闘機:第4部その1を読む:感想

第四部はバトルオブブリテン本体時期の全容を記述した大章ですので、半分に分けました。

前半を読んで強く感じることは、ドイツ空軍がバトルオブブリテンの準備が出来ていなかったことは周知ですが、イギリス空軍の準備も惨憺たるものだったと言うことです。

バトルオブブリテンでロンドンの空を支えた主力機種であるスピットファイアが量産軌道に乗ったのは本当にデッドラインすれすれでした。そして、その生産体制は極めて脆弱で、ドイツ軍が諜報活動と言うものに少しでも重きを置いていたら弱点を集中攻撃されて破綻したであろうことが語られます。

そんな状況であるにも関わらず、なけなしのハリケーンをフランス支援に送り出したのは狂気の沙汰であったことが判ります。ロンドンの守護者であったダウディングは、海峡護衛任務を最初から視野外に置いたとのことですが、この賢策なくしてはロンドンは守り切れなかったことでしょう。後半で判りますが、実はこの策を講じてさえも、ドイツがもう少し徹底的であればバトルオブブリテンは負けていたのです。

イギリス空軍の前半戦の問題点として、実戦に見合わない戦技訓練の弊害も語られます。そもそも戦闘機という存在自体が大戦の過程で進化し、戦略的意義も増加して行ったので、後知恵ではあるのですが、それでも余りに教条主義的だったのではないかと感じさせます。

もう一つの大きな問題点として修理能力の不在が挙げられ、これがプロジェクトX的にビーヴァーブルックにより民間主導で政府と無関係な所で解決されたのは印象的です。これはドイツの航空機産業が軍事政策の密接な支配を受け、個人の勢力争いで汚染されていたのとは対照的です。