☆死の迷路を読む

と言うことで、山形訳が図書館にあったので借りてきました。

昔のサンリオSF文庫は「死の迷宮」で、こちらは「死の迷路」です。

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余談ですが、「TACTICS」の付録ゲームになったSPIゲームは「死の迷宮」。

訳が変わったせいかどうかは明確でないのですが、非常に楽しく読むことができました。

辺境惑星デルマクOへの異動を告げられた登場人物。着いてみると、そこには同じ境遇の十数人が集まっており、誰も任務の詳細を知らない。その任務を説明するテープを再生しようとすると、テープは自己消去してしまう。そして、誰もが片道専用の宇宙船で来ており帰ることもできない。

そんな状況下で、一人、また一人と変死を遂げて行きます。

クリスティーの「そして誰もいなくなった」みたいな話しではあるのですが、テイストは何処までもPKD。

スペクトフスキーなる人物が書いた、ランダムにページを開くと人生の指針を与えてくれる宗教書。

何か物を与えると、それの模倣品を製造して見せる現住生物テンチ。が、本物ではないので数日後には劣化して崩壊してしまう。

不思議なガジェットが溢れており、登場人物たちは落伍者ばかり。終盤には、それまで信じてきた世界観が崩壊していく。いろいろな意味で、いかにもPKDの中期作品らしい一作。

最後にはちゃんとしたSF的種明かしが行われるのだが、その種明かしも「上手の手から水が漏る」ように新たな不条理が。

発表順を見ると、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」と「ユービック」の2つ後なのだから、ある意味で脂の乗ったディックらしい作品であるのはむべなるかな。

そうすると、これらの間に挟まれた「銀河の壺直し」も読み直して見ようかと。調べてみると、この本にもサンリオSFの汀訳とは別に、大森望の新訳本があると言う。

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これも図書館にあるので、次は「銀河の壺なおし(なぜか直しではなくなりました)」で再会しましょう。