と言うことで、死の迷路を脱出して辿り着きました。
ハヤカワの大森望による新訳版です。図書館。
こんなに面白かったかと言うくらい快調に読み終わりました。
伊達に、「ユービック」の次に発表された訳ではありませんでしたね。
典型的な中期ディックSFです。
主人公は脱落者。
行き先は謎の異星生物がゾロゾロいる未知の惑星。
未来の真実について記述された謎の本。
巨大生物グリマングと、その敵であるブラックグリマング。
面白い所では、WIKIとsiriを併せたような24時間辞書サービスがあり、知らないことを尋ねると百科事典的な説明をしてくれます。しかし有料で上限があり、個人を声紋特定してインチキして上限以上の情報を引き出そうとする人間をシャットアウトします。
主人公の仕事は、今や実需がない陶器修理。その能力を買われて、グリマングから海底に沈む大聖堂引き上げプロジェクトのメンバーとして巨額の成功報酬で雇われます。
行った先では同じように雇われた様々な宇宙種族のドロップアウトしたスペシャリストと出会います。そして、皆でグリマングに吸収されて集合精神としてプロジェクトに挑みます。
エンディングではプロジェクト成功後に帰還し、修理ではなく新しい壺の創作に挑戦します。
ここでの最後の一行の解釈がサンリオ版と正反対になっていて、その結果、読後感が全然ちがっています。英語の問題としては、大森訳で正解と思います。ただ、サンリオ訳の救いのある結末も、それはそれで味があります。本書にはサンリオ訳がどうだったかも説明されているので、両方比較するのにサンリオ版を探す必要はありません。
サンリオの汀訳と言えば、もう一冊、「シミュラクラ」があります。こちらも山田和子の新訳が出ていて評判が良いようです。残念ながら図書館にないので思案中。