山田正紀の神シリーズ第3弾です。
角川文庫、再読。
弥勒戦争を読んでから随分と開いてしまいました。
今回は、神に挑戦する無力な人間の話しではありません。
神になってしまうべく運命づけられた榊兄妹の話しです。
セスナ機事故で奇跡的に行き残った兄妹は、日本の政財界の黒幕を集めた「渡虹会」の庇護を受けて学生となります。なぜ会は身寄りのない二人を支援するのか?
フランス留学した妹の乃梨子は、帰路にパキスタンに寄ると連絡したまま一向に帰国してきません。その妹を探す兄の賢二は、「渡虹会」、さらにはその背後に潜む翁と呼ばれるフィクサーと対峙するようになっていきます。
その結果、兄妹は人間を遙かに超えた存在として覚醒するべく運命づけられていることが判り、賢二は妹がまだ人間である内に死なせてやろうと考えるに至ります。
しかし、先に覚醒した乃梨子は賢二より遙かに強力な超能力者となっていて、容易には歯が立ちません。
かくて賢二は渡虹会や、かつて乃梨子を愛した同級生たちを巻き込んで対決することに。
圧倒的な敵と戦うという構図は、終盤まで来て本作においても実現します。
巻き込まれて死ななければならなかった古賀れい子や後藤、西丸たちが本当に気の毒です。ただし、彼らも含めた青春群像劇でもあるのかなと今回は思いました。その意味では、「アフロディーテ」や「影の艦隊」と通じる部分もあるのかなと。