○わが赴くは蒼き大地を読む

ハヤカワ文庫JAリストからの2冊目。

田中光二です。

田中作品を読むのがいつ以来か思い出すことができません。SFマガジン連載の「ロストワールド2」は連載で読みました。「大滅亡」は文庫で読みました。後は「幻魚の島」くらいでしょうか。これが1977年だそうですので、44年ぶりでしょうか。

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SFマガジン、2回分載だったそうです。

地球は謎のエイリアンの侵略を受け、地上には人間は住めなくなりました。生き残った人々は世界に3つだけの海底ドーム都市に隠れ潜み、一部は水棲人化して積極的に海で生きる道を歩み始めています。

パシフィックシティでエイリアンに対抗できるウィルスが発見されましたが、培養のためにはカリブ海だけに生息する海藻が必要だというので、カリブシティまで潜水艦ノーチラス10世号と、護衛のオルカ(タイタン)と共に二人で冒険旅行に出ます。

しかし、海にはエイリアンが撒いた突然変異誘発剤で巨大化、凶暴化した海の怪物が溢れているという設定です。

筆者は潜水艦好きですし、一種、怪獣(海獣?)図鑑的な面白さもあって楽しく読みました。

しかし、本作はハッピーエンドになりません。カリブ海には着くのですが、既にカリブシティはなくなっているのです。

最後は逆方向の冒険に出発する所で終ってしまい、人類復活への道は一向に見えてきません。そういう意味では、割と後味が悪い感じの作品です。

作者のあとがきでは、田中氏の冒険小説への深い造詣が披露されていて、この部分だけでもネット公開すれば良いのにと思いました。田中氏が最近読んだ冒険小説として挙げているのが「ウォーターシップダウンのうさぎたち」と言うのは、ちょっと意表を突いています。

あとJAなのですが、口絵がありません。表紙や口絵にしたくなるような冒険シーン続出の作品なのに、表紙は抽象画、口絵はなしと言うのも、とっても勿体ない感じがします。他の田中作品も読まねば‥とは思いませんでした。