×やさしく語る碁の大局観を読む

半年以上かかってようやく読み終わりました。

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白石勇一七段です。

まず、タイトルが中身を適切に表していません。

端的に言えば、「置き碁の白番を持って困っている人に」という内容です。また、内容も決してやさしくありません。かなり難しい部類に入ります。

世に置き碁というルールがある以上、それを打っている人の半分は白番のはずです。しかし、白番の打ち方を教授してくれる本は世にほとんどありません。

理由として、一部の例外を除いて白番を持つ人は有段者であり、一通りの棋理は理解しているし、序盤から終盤まで大きな間違いなく打てるはずだからです。

そうではあるのですが、現実問題として2、3子くらいならともかく、全部の隅に先着されている4子以上になると、どう打って良いか困っている人も少なからずいるはずです。そういう人向けの本を白石先生は一度書いてみたかったということのようです。

白番の指針として、

足早に打つ

戦場を見極める

狙いが残るように打つ

などが重要と説きます。なるほど。

具体的なテクニックの最初に出てくるのが「線を切る」です。相手の石のグループごとの連絡を遮断する技術です。

分断された石は当然ですが個別に生きなければならなくなります。たくさんの石が発生すれば、中には頓死する石も出てくるかもしれません。そこまで行かずとも個別に生きなければならないので、それぞれに対する白から見た「狙い」がいろいろと残るようになります。

してみると、今村俊哉九段の「繋がるのが好き」と言うのが黒番に対するアドヴァイスとして如何に重要であるかを改めて気づかされます。

後半は具体的な置き碁対局における実践編の解説となっています。特に8子、9子局の具体的な打ち方の解説は滅多に見かけないので、そこは興味深く読みました。

にも拘わらず×評価なのが、本書を必要とする人が少なく、また必要とする時期が短いからです。6子以上の力が離れているケースでは、下手が勉強熱心であれば急速に置き石は減っていくので、この手合いで継続的に打つというニーズはあまり想定できないからです。それがこうした技術書を滅多に見かけない理由でもあるのだと思います。

ただ、世に一冊はあって良い棋書だと思いますし、このテーマで書くのなら他に上手い書き方はないでしょう。ですので絶版にならずに長く手に入るようにあって欲しいとは思っています。みなさん、お布施しましょう(苦笑)