赤い闇を見る:ネタバレ注意

先日観に行った「ひまわり」の時に同館のウクライナ特集第2作として予告されていたものです。

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スターリンの第一次五か年計画の時にウクライナで発生した人為的飢饉の話し。

ホロドモール - Wikipedia

場所はキエフでもハリコフでもありませんが、スタリーノ(現ドネツィク)になります。

大恐慌時代に唯一経済好調のソビエトの秘密を取材に行ったイギリス人ジャーナリストの話し。

モスクワに着いても指定されたホテルに缶詰めで取材に出られません。ピュリッツアー賞記者であるデュランティの家に招かれますが単なる阿片パーティーでした。デュランティは、クレムリンから提供された題材を本国へ送っているだけで、とてもジャーナリストと呼べるような人物ではありませんでした。

Walter Duranty - Wikipedia

ウクライナ軍需産業の発展を見せてあげようと言われて鉄道に乗りウクライナへ、途中で勝手に地元の列車に乗り換えて母の故郷ユゾフカ(スタリーノ)へ。

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そこでは、豊かな穀倉地帯のはずなのに飢えに苦しむ人々が。

飢えた兄弟たちの家に助けられ肉の入ったスープを与えられます。

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肉の出所について娘に聞くと、「兄が」とだけ答えます。

「兄さんは猟師なの?」と聞くと、曖昧な微笑しか返ってきません。

「兄さんはどこに行っているの?」

と尋ねると家の裏手を指します。

そこを見に行くと、倒れている少年の死体。

肉は兄が獲ってきたのではなく、兄の肉だったのです。

拉致されてモスクワに連れ戻されます。イギリスに戻って見たことを記事にすると言うと、君が見たことを記事にすれば強制逮捕したイギリスのヴィッカース社のエンジニア6人を処刑すると脅されます。

それでも記事にするのですが、クレムリンは全面否定します。ロイド・ジョージからは、「君に記事内容を撤回させると約束した」と言われてしまいます。

デュランティのピュリッツアー賞剝奪などいろいろと動きますが、イギリス政府もアメリカ政府もヒトラーを倒すためにソビエトが必要なので動きません。

恐ろしいものを見たという気がします。

ジャーナリズムとは何なのか、国際外交とは何なのかを考えさせられる、戦慄のメッセージ映画でした。

多少、グロい部分もありますが、普遍的な価値を持つ今後も生き残る映画だと思いました。

本作の本編前には「ダークウォーターズ」の予告編が入っていて、これも見たいなと思わせました。5月中旬に1週間だけ上映の予定だそうです。

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