☆山の上の交響楽を読む

「新しい時代への歌」が良かったので、音楽SF繋がりです。

表題作は1988年の星雲賞受賞作。

一日8シフトで、一万年も掛かる交響曲を山の上の奏楽堂で演奏し続ける話です。

数か月後に来る「難所」では、8シフトの楽団員全員が総出で演奏する場面があり、現存しない楽器、八百尺や石琴も使われます。その部分を誰が指揮するか? 幻の楽器を期日までに製作できるか? バイオリンソロは誰が弾くのか クライマックスに併せて奏楽堂の屋根を開けたいという要望に応えるのか? 巨大な石琴を弾くには8シフトの打楽器担当が全員で掛かっても人手が足りないという問題も直前にわかってきます。

など、次から次へと出てくる問題に対応していく一種のプロジェクト小説です。

たいへん面白いのですが、音楽の魅力の神髄に触れているかと問われると、「新しい時代への歌」ほどには触れていないかもです。

表題作以外では「見果てぬ風」が一種の異世界ファンタジーとして面白いと思います。

音楽SFと言うと、カードの「無伴奏ソナタ」、「零號琴」なども思い浮かびます。この機会に再読しようか思案中。