☆パーフェクトコピーを読む

 アンドレアス・エシュバッハです。「NSA」、「イエスのビデオ」に続いてはや三冊目。

 今回はポプラ社のハードカバーのジュブナイル。この判型を見ると、小中学生の頃に読んだ江戸川乱歩の少年探偵団や、ルブランのルパン(三世ではない方)を思い出します。

 お父さんにお前は世界に通じる才能があるチェリストなのだから、その自覚を持って必死に練習せよと強制され続ける少年の話し。

 折からクローン羊のドリーが話題になる時代なのですが、自分にはそんな才能はないと思うのですが父のライブラリで見つけた「J」とタイトリングされたカセットを聞くと、昔の自分のチェロ演奏は本当に素晴らしかったことに驚きます。

 そこが出発点で、自分は音楽家になりたかったのに医者の家系で医者になることを強要された父が昔の憧れを託した父のクローンなのではないかと疑い始めます。このことがマスコミに嗅ぎ付けられて大騒ぎに巻き込まれます。折から主人公の初恋物語も絡めて、非常にテンポ良く読ませます。

 結局、検察がやってきて二人の細胞を採取して調査しますが、父親のクローンでないことは証明されます。ここで一安心なのですが、エシュバッハは一安心させておいてからさらに捻ってきます。

 父のクローンでないと証明されても、他の誰かのクローンかも知れません。このことをDNA分析で調べられることを独学で知り、その調査を受けたいと希望します。

 そんな時に自分の子供時代の写真を見つけるのですが一緒に写っている人物が誰かどうしても思い出せません。そのことで、やはり自分はクローンなのかと疑い始めます。

 最終的にはチェロの才能豊かだったが事故死した兄のクローンだったということが判り、いささかご都合主義ですが事故死したと思われていた兄も生きていて再会できてしまいます。ちょっと甘すぎるかなという気もしますが、ジュブナイルなのでこんなものなのでしょうか。

 圧倒的なリーダビリティ。きちんとしたSFガジェット。解けたと思わせてからさらに一捻りあるミステリー。全体として今回も非常に良く出来ていると思います。