〇怪盗世直し衆を読む

 大富豪同心26です。図書館。

 これもまたTVシーズン3の元ネタなので、シーズン3を見たのでネタワレしていますが、そんなことは関係なく楽しくスラスラと読めます。
 ここ2冊ほど、圧倒的にカッコイイのが菊野姐さんです。
 これに大阪からやって来たおカネさんが目を付けて‥。
p25
「汚れている!」
 美鈴と銀八はたちまち竦み上った。
 おカネの憤怒は止まらない。
「街奉行所同心の役宅が薄汚れていたのでは町人たちに示しがつかない。あんたたち、恥ずかしいとは思わないのかい!」
 美鈴ははたきをパタパタとかけ始めた。すかさずお小言が飛ぶ。
「はたきは上からかける!埃は上から降ってくるんだ、下からはたきをかけていったんじゃ、上にはたきをかけたときに落ちてくる埃が下に積もって、綺麗にしたはずの下が、また埃まみれになるじゃないか!」
p87
 いつの間にかおカネが横に来て、二枚の地図を見下ろしていた。
「火除け地の図面は、複数枚を描き直して、お上のお歴々に回覧していただいたんだ。どこかの悪党が絵図面を手に入れて、火を放って回っているとしたら、話が繋がるね」
 卯之吉は首を傾げて聞き返す。
「なんのためにそんなことを?」
「丸焼けになれば土地の値が下がるだろう? 破産した商人たちは進んで沽券を売り払おうとするはずだ。安い値で沽券を買い集めることができるさ。お上が火除け地造りを発表する。すると沽券の値はぐぅーんと上がる」
p114
「卯之さんのことは諦めて、実家に帰るのかねぇ」
 美鈴は俯いた。
 菊野はニンマリと笑って大きく頷いた。
「わかったよ。任せておおき。料理や掃除や裁縫なら、あたしがこっそり鍛えてあげようじゃないか」
 着物の胸をポンと叩いた。
p183
「なんですね。旦那様がた、深川の門前町が危ないところだってのに、ご自分の都合ばっかりを考えなさるなんて!」
 威勢の良い啖呵が聞こえてきた。
 廊下の障子が開けられる。廊下には菊野と深川芸者衆がズラリと並んでいた。
p185
 喜七は証文を捲りながら算盤を弾いている。
「あたしも手伝いましょうかねぇ」
 菊野も文机を前に据えて座った。証文に目をやりながら算盤を弾き始めた。
 おカネが声を漏らした。
「達者な算盤じゃないか」
「ええ、まあ、これでも苦労してますのさ」
p215
「菊野だけどね、あれは独り身かい」
「ええ、独り身だと聞いております」
「ならば好都合だねぇ‥
 卯之吉の嫁に、だよ。しっかり者だし算術も達者だ。家事全般がよくできる」