2月のNHK杯囲碁トーナメント

 2日は、令和三羽烏の一角、許九段に関西棋院の表3段が挑戦。

 解説は名人戦リーグに復活した関西棋院の村川九段。

 許九段は、もっと険しい棋風のように思っていたのですが、本局では解説者の指摘通りに両者とも手厚く打って決戦を急ぎませんでした。こういう碁は形勢判断が早く正確に見えるかどうかが勝敗の鍵を握りますが、非常に難しく、村川解説者も今一つ歯切れが良くありませんでした。じわじわと許九段が優勢になっていき、これと言った大技は決まりませんでしたが貫禄勝ちしました。

 9日は、またも関西棋院の余8段がまたも令和三羽烏の芝野前名人に挑戦。

 両者かなり意欲的な布石でしたが、此処では布石のイニシアチブを持つ黒(余)が少しポイントを挙げたでしょうか。以下、芝野前名人は長い劣勢の時間を、虎視眈々とチャンスを狙って黙々と打ち続けましたが、残念ながら最後までチャンスらしいチャンスは巡ってきませんでした。

 この碁では筆者が見る限り芝野君が人間から見て普通の応接をしているのに、AI評価が急激に黒に傾く場面が二度ほどあり、なんでこうなるのだろうと思いました。解説は鈴木8段でしたが、鈴木8段も同じ反応で「ああ、こういう受け方じゃダメなんですかねぇ?」と怪訝そうな感じ。ここらへん、鈴木8段を8段解説者5人衆(鶴山、林、首藤、平田、瀬戸)に数えられない‥という個人的評価に繋がっています。

 16日は、一力NHK杯と井山王座です。

 安田さんもコメントしていましたが、事実上の決勝かというカードです。

 近年はAIが凌ぎ持ちなので、相手に攻めさせて凌ぎに回る駆け引きが焦点とは、解説の三村九段。この碁はその通りの展開となり、右辺から難しくなり上辺へと波及しました。ここで、取られかけている黒の三子から鍋蓋に曲がる手で上辺の白を取り切れば黒優勢という図をAIが示し続けましたが、両対局者ともそこを打ちません。なので、一手ごとに最善手を打ち逃した側の勝率が急降下するというシーソー現象となり、AI評価は大混乱しました。

 三村九段が指摘した通り、「あまりに形が悪いので強い人ほど目が行かない手」なので止むを得ないでしょうか。裏を返せば、AIの「昔は愚形として打たれなかった手でも実践的に有用な手段なら積極的に採用する」という特徴の典型例です。

 結局、上辺の白を取り切る手は最後まで実現せず、黒の一力NHK杯の苦しい形勢で推移。止む無く黒は勝負手を連発して混戦に持ち込もうとしますが、さすがに無理筋がたたって投了図となりました。これで、過去10年で8回決勝に進出していた常勝王者が姿を消したので、残りの棋士にとっては一気に優勝のチャンスが膨らんだ感じです。

 まぁ、本命は井山ですが、平田君や佐田君といった若手にもチャンスが出てきたように思います。

 23日は、富士田7段と佐田7段です。東西の俊英対決。解説はAIソムリエの関航太郎九段。そうか、天元二期で、もう九段なのですね。

 佐田先生が富士田7段を評して、AIの示すA以外の手の展開も研究しているとコメント。関解説者は、AI研究も深いが自分の考えを加えて独自の世界観を持っているとコメント。

 碁の方は黒の佐田君が地を稼いで先行する展開に。富士田7段が下辺の黒への攻めを見る展開となり、佐田先生がAIの好むしのぎに回ってAI高評価で先行しました。

 下辺の黒は渡りを賭けた劫になり、劫争いをしながら、上辺、右辺など、いろいろと進む難しい進行に。右辺の黒地は白がコウダテで打ったサルスベリを受けなかったために大きく減り、上辺の白地も同様に大きく減りました。両者とも地が少なくなる展開で黒の上辺の確定地がモノを言って優勢に。いろいろとごちゃごちゃしましたが、最後は富士田先生が投げました。

 関解説者の解説を聞いていると、AIの意見を入れる時と、古くからの囲碁の教えに従う時のメリハリがあるのが判り、その判断をするのが人間の役割であり個性の出る所なのだなと思いました。

 佐田先生の次は余先生との関西棋院対決となります。