〇鋼鉄都市を読む

 ゲームを中心に断捨離しているのですが、本も手を付けてみました。

 蔵書が作者名の五十音順に並べてあるので、「あ」からです。

 アシモフ

 あかね書房の少年少女世界SF全集の第1巻だったので、図書室や学級文庫の定番でした。なので、小学校高学年から高校くらいまでは、あかね書房版を五回も六回も読んだはずです。

 大学に入ってからは読んだ記憶がないので42年ぶりでしょうか。

 今回はハヤカワ文庫版を読みましたが、リーダビリティが悪くて難渋しました。特に主人公のイライジャの性格が追憶にあったよりずっと悪くて‥。

 やや遠い未来。地球は80億の人口を抱えていてシティと言われるイースト菌フードを食べて高速自動走路が縦横に張り巡らされた密閉都市で暮らしています。

 かつての宇宙開発時代に地球が開拓した太陽系外植民地の宇宙人が地球にやってきて、自然に還ることを推奨してくれていますが、既に広場恐怖症を種族単位で発症している地球人には受け入れられません。

 宇宙人はロボットを使用しており、これには有名なロボット三原則が搭載されています。

 そんなある日、ニューヨークシティと隣接する宇宙市で親地球派のロボット学者が死体で発見されます。主人公のシティ警察のイライジャ刑事は捜査を担当することになり、宇宙市とシティの間を行き来することに。宇宙市側からの強い要請で、ロボットRダニール・オリヴォーをバディとすることを義務付けられます。

 イライジャも地球人の大多数と同じくロボットに悪い印象を持っていますが、それでも協力して捜査にあたる内に、人間とロボット、地球人と宇宙人の新しい関係の可能性に気付いていく‥という非常に楽観的なお話しです。

p92

「では、気を悪くしないことをお願いしておいて、説明しましょう。紙と筆記具を、貸していただけますか?ありがとう。これを見てください。パートナー・イライジャ。この大きな円は、ニューヨークシティです。さて、これと線を接して、もう一つの小さい円を描く。これが宇宙市です。ここの、両方の円の接するところに矢印を書きます。これが障壁です。さあ、これで、ほかには連絡口はありませんね?」

p158

寄生虫による病気には罹りません。もちろん、ミスタ・ベイリ、われわれも動脈硬化症のような退化性の病気にはかかります。しかしわたしは、たとえばあなたがたの、いわゆる風邪というものをひいたことがない。もしかりにも引いたら、おそらくわたしは死んでしまうでしょう。わたしは、そういったものに対して、全く抵抗力がないのです。さあ、これがこの宇宙市に住むわれわれの欠点なのだ。ここへやって来ているというだけで、われわれは生命の危険を冒していることになるのです」

p160

 ファストルフ博士は露わな驚きを浮かべた。「あなたがたは、現在の地球の生活に満足しているのですか?」

「どうにかやってゆけます」

「やってはゆけよう。しかし、それが今後いつまで続くと思う?地球の人口増加はとどまるところを知らない。生きてゆくに必要な最低限のカロリーすら、しだいに補充困難になって、辛うじて間に合っている現状だ。地球は袋小路にいるのですよ、きみ」

p163

 それは、地球におけるシティ文化のせいなのだ。シティ以前の地球の人間生活は、さほど特殊化していなかったから、彼らは脱出することができ、困難な新世界で新規まきなおしをやった。三十回にわたって、彼らは再出発を行っているのだ。しかしいまや、地球人は、あまりに甘やかされ住み心地の良い鋼鉄の洞窟の中に閉じ込められた生活に馴れてしまったために、完全に偏見に捕われてしまったのだ。たとえばあなただ、ミスタ・ベイリ、あなたは、シティの居住者が野外を宇宙市まで歩いてゆくということをすら、どうしても信じようとしない

p311

「われわれの作戦を百八十度転換しなければならないことを、はじめて理論づけたのは、サートン博士でした。われわれは、まず、われわれの望んでいることを同じように望んでいるか、ないしは、説得し得る地球人を、全人口の一かけらでもいいから見つけ出さねばならない。そうした地球人をはげまし、援助することによって、運動を外部からの押し付け的なものでなく、内から盛りあがるものにできる。最も困難なのは、われわれのこの目的に、最もよく合った地球人を発見することでした。そこで、イライジャ、あなたが、興味ある実験の対象として選ばれたのです」