新しい期の開幕です。
開幕戦は、名古屋の羽根九段と関西棋院の表三段です。
解説は八段解説者五人衆から瀬戸八段。
表君は今回も参加最年少だそうですが、昨年の二回戦で張栩九段を倒して名を挙げました。今度は羽根九段です。
序盤は黒番の表君が積極的な打ちまわしでリードしましたが、羽根九段は慌てず騒がず確定地を稼いで着いていきます。確定地では白がリードしているので、黒は中盤以降、手抜きして大ヨセに手を回していきますが、その過程で下辺の大石が薄くなり、ここでAI評価は逆転しました。しかし、非常に細かい状態で小ヨセまで突入していき、最終盤で左上の黒のアテの時に手抜いて左下の黒を切断する手に回れば羽根先生の勝ちだったようですが、白は左上を受けて微細なヨセに望みを託しました。最後は黒が半劫を繋いで黒の半目勝ちという最小得点差で表君が昨年の張栩九段に続いて羽根九段を降ろして平成四天王の二人目を仕留めました。
瀬戸八段の解説はいつも通りに安定していました。
聞き手の安田さんは予想通りに二年目に入りましたが、今回は少し積極的に自分の意見を述べられるようになり、好感を持てました。
13日の第2局は、鈴木伸二八段と六浦八段、解説は孫喆七段。
孫七段によると、この3人は2019年の名人戦リーグに揃って新参加して、揃って陥落したメンバーなのだそうです。そして、その後は参加できていない所まで仲良し。
鈴木八段は、女流団体棋戦の日本女子囲碁リーグの囲碁将棋チャンネルチームの監督をしていて、このチームに孫さんの奥さんの星合前聞き手もいます。孫君が「星合がお世話になっていますので」と言っていましたが、そうか「星合」って呼ぶのかと意外に思いました。
碁の方は序盤から黒の鈴木八段が三隅に確定地をとって優勢に。しかし、白は下辺の地模様が大きく、このまとまり具合次第という展開に。
後半になってAIが黒に下辺深く打ち込めと言う推奨手を表示して、孫君は「こんなに深く打ち込んで行かないと勝率が維持できないとしたら、黒も自信を持てないですね」とコメント。最終的に、黒は打ち込みを決行し、白は丸のみにしに行く展開に。ここらへんから勝率が互角に戻ってきて、解説者は「これで互角ってどういうことなんですかね。取れば白よし、しのげば黒よしのオールオアナッシングのような気も」。筆者は、黒が下辺を捨てて、右下の白を取るフルカワリになってヨセ勝負なのかなと思って見ていましたが、両者とも部分的に捨てて妥協することはせず、白はなんとか下辺の本体を取り切りましたが、黒は中央から下辺にかけて食い込んで白地を大きく減らしたので、最終的に作る所まで行き、解説者の盤面10目見当という予想の通りに、黒の3目半勝ちとなりました。
孫喆解説は非常に聞きやすくて、八段五人衆に次ぐ良い解説者と言う評価を再確認しました。安田さんは第一局に続いて、かなり積極的にコメントするようになり、二年目の努力を買うことができました。
余談ですが、安田さんは本因坊戦予選で今年の初勝利を挙げ、ようやく片目が開きました。去年は年間で2勝しかできなかったので、今年はまず3勝して欲しいものです。頑張れ、安田明夏。
20日の第3局は、関西棋院の辻五段と、横塚七段です。
解説は八段解説者五人衆の一角、昨年大躍進した平田八段でした。
碁の方は、辻五段が三隅の実利を取って先行。特に右下では白の石をザクザク取って大きな地となり、見るからに黒が良さそう。
しかし、AIの形成判断は互角か、少し白が良いくらい。平田解説者が指摘していましたが、左上の締りを拠点に上辺、左辺、中央から下辺にまで繋がる巨大な地模様を展開していて、この纏まり具合次第では勝負になろうかというAI様のご託宣です。
そこで黒は右辺から中央に向けて白の地模様を制限する着手で勝勢を確定しに行きましたが、白も抵抗。一時は黒の勝率が98%まで行きました。しかし、ここら辺からもつれ始め中央上辺よりで発生した劫争いで白が上辺から右辺に雪崩れ込む形で決着し、これにより黒の中央の石と右上の連絡が切断されて浮石になったあたりで白の勝率が回復してきました。最後は中央の黒の浮石の眼が怪しくなり、白の左辺のヨセに受けられないのではないかという解説者の判断にも拘らず辻五段は全て受けきって、ついに横塚七段が刀を抜いて黒の大石を斬殺して逆転。辻五段はしばらく考えていましたが、結局、投了となりました。
平田君の解説は適切な密度で、全局的な形勢も、部分の大捕り物も上手く解説してくれました。今期中に、もう一回出てきて欲しいものです。
27日は河野臨九段と関西棋院の佐田七段です。解説は、八段解説者五人衆から鶴山八段。
今年は4月から飛ばしてきますね、NHKさん。まぁ、最初の数回で見る習慣が定着すると一年間見てもらえるかと思うので、この作戦で正しいと思います。
碁の方は佐田先生が四隅を取って実利で先行する展開に。止む無く河野九段は白で厚みを全域で確保して中央の大模様で対抗することに。この模様へ黒が殴り込んで、それを珍しく河野先生が剛腕を揮って仕留めに行く展開に。黒の上辺の大石の死活が危うくなり、命懸けの劫に。その劫材を作るために白が右上の二間締まりに手を付けて行き、ここも黒に負担が重い劫になります。
負担の重い劫が二か所で発生して、右上は黒が勝ち継ぎましたが、上辺の大石は召し取られてしまいます。ここで白の優勢が顕著になり、佐田先生が局面を複雑化するような手段を次々に選んでゴチャゴチャっとしましたが、平成四天王時代の五番目の男は伊達ではない河野先生が受け切って快勝しました。
前週の平田君に続いて、鶴山先生の解説も安心感ありました。講座講師だったこともあり、安田さんもやりやすそうでしたね。