べらぼう 第12回:俄(にわか)なる『明月余情』を見る

 続けて一気に見ました。
 今回は、大文字屋が提案した、吉原の宴会芸、にわかを祭りにする話しの本編になります。
ごく簡単に前回の経緯のおさらい。
 馬面太夫は、豊前太夫を襲名しました。

 そのお陰で耕書堂の直伝本は好調。同時に青本に集中することにした鱗型屋の青本も好調です。

 さて、にわか祭りは大文字屋の構想なのですが、なんと吉原の反主流派となった若木屋が、にわか祭り惣代を名乗って回状を回してきます。これに怒り心頭の大文字屋。

 しかし、喜三二と話した蔦重は、「町が割れるのは祭りにとっては悪いことではない。神田の祭りだって競い合って立派な神輿を作り合って盛り上がってきたのだ」と説かれ、なるほどと納得します。

 それぞれの大見世では、禿を中心に踊りや芝居の演目を練習し始めます。
 さて、惣代は若木屋にやりたければやってもらおうじゃないかと譲った大文字屋は、自分たちの演目として雀踊りを登録します。伊達家の仙台藩で流行し定着したポップな踊りです。
 ところが、後から若木屋が同じ雀踊りを登録してきたので大文字屋はますますエキサイトします。売られた喧嘩を買わないのは江戸っ子の沽券にかかわります。
 さて、祭りで配布するパンフレットに、いつぞやのように源内先生に序を書いてもらおうと頼みに行った蔦重ですが、タイミングが悪くエレキテル装置の量産を開始したばかりで忙しい源内に袖にされます。で、源内が代わりに推薦したのが。

 喜三二先生って物書きだとは知らない蔦重。喜三二に頼んでみると、なんと青本の人気作家だと教えられて、またビックリ。ウチでも青本を書きませんかと頼んでみますが、そもそも青本作家であることは秘密と釘をさされます。そもそも秋田佐竹家の江戸留守居役ですので、実は内職禁止なのです。

 事実上の鱗型屋専属作家である喜三二は鱗家にも土下座で引き止められて二股はかけられず耕書堂には書き下ろせません。

 では、今まさに燃え上がっている大文字屋と若木屋の争いを源平合戦に見立てて読み物に仕上げて祭りで出版してはと二人ともアイデアだけはいろいろ。

 さて、若木屋と演目がぶつかってしまった大文字屋は、蔦重に策を相談しに来ます。
 そこへ現れたのは馬面太夫

 相手が有名な振付師を使ってくるという話しを聞いて、太夫

 と同じくらい有名な振付師に頼もうかと言い出し、口を聞いてくれるというのです。
 そんなこんなで見世ごとの演目も決まってそこらじゅうで練習に華が咲きます。
 そんな中、ぼやいている空蝉と松の井

 そうですね。花魁は同伴出勤して見世の座敷から見物する側なわけです。
 いろいろと細かいことも決まってきます。
 にわか祭りは30日間の日程とし、開催中は切符なしで大門は出入り自由にして、普段は吉原に簡単には入れない女性客も積極的に来てもらおうということに。

 惣代の若木屋は、入場料代わりに錦絵を買ってもらうこととし、それは西村屋に頼みます。
 そんな中、耕書堂は新しい企画もなく、少し手持無沙汰。蔦重は祭りが始まれば見えてくるものもあるだろうとゆったりと構えます。
 祭りの演目の口切り口上にひっぱりだこの二郎兵衛。

 おっと、「鎌倉殿の十三人」にも出てきた曽我兄弟。
 これに謡を付けるのは人気絶頂の豊前太夫です。気付いた人から感嘆の声が出始めます。いま人気絶頂でチケットが取れない太夫の謡いを祭に来ればただで聞けるのです。

 さて、いよいよ祭りの初日の午後、大人数の演目の筆頭で、大文字屋の雀踊りが出ます。

 大文字屋の踊りが仲通りを進んでいくと、反対側からも雀踊りが。若木屋の一団です。互いに「こちらこそが本家」と、ここぞとばかり全力で踊り合います。両家の当主同士があまりに必死なのに周りは退いてしまい。二人だけで一騎打ち。

 この雀踊りの対決は大いに話題となり、蔦重は「なるほど、祭りと喧嘩は相性がいい」と納得します。
 29日目には両方の店の店主同士が褌一丁で踊り合うように。
 この盛り上がりを見て、蔦重は墨摺りで祭りの速報を刷って出そうと、絵師の勝川春章と力を合わせます。二束三文の墨摺りですが、毎日出すことで量で稼ぐ路線に。そして、頁が纏まったら閉じて冊子にして本として売ります。これが、エピソードタイトルの「明月余情」です。

 ところで、雀踊り対決の最終日は、もうこれ以上は脱ぐものもなく、店主同士が扇子と笠を交換して、両店総出で踊り明かして仲直りしましたとさ。

 さて、松葉屋の二階で眺めていた空蝉と松の井の所に、やり手の男がやって来て最終日なんだから花魁たちも行くよと声をかけてくれます。

 見世の出口から出た所で新之助を見つけた空蝉。その空蝉を見送る松の井は、旅笠を渡して

 と空蝉の背中を押して送り出し、二人は切符無用の大門を通って出て行きます。

 最期は蔦重のこの台詞で終劇です。

 反主流派の若木屋との手打ち、空蝉と新之助の駆け落ち。いろいろと感慨深い吉原の俄か祭りとなりました。
 今までも何回か神回がありましたが、これも神回の一つと数えて良いのではないかと大いに満足しました。