男たちの旅路:廃車置場を見る

 すんごい間が空きましたが、こちらの次です。

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 第二部となり、メンバーが入れ替わりました。森田健作が抜けて、柴俊夫が入ってきました。

 この回の冒頭は、名古屋市総合体育館(推定)での国際体操大会の警備です。あの「コマネチ」が来日して演技をしている大会で大混雑です。

 杉本(水谷豊)が警備している駐車場に、誘導指示を無視して進入してきた車を運転しているのが鮫島(柴俊夫)です。

 少し経ってから警備会社の入社希望者の体力測定で杉本は、鮫島が参加しているのを見付けます。第一印象が悪かったのに加えて、体格が良く空手経験者の鮫島に、杉本は簡単に捻られてしまいオカンムリです。で、かつて自分たちが吉岡に言われたように「自信があるヤツは怪我をすることになるぞ」と言い、ちょうどやってきた吉岡に「こいつをやっちゃってくださいよ」とけしかけます。

 吉岡は「杉本は口は悪いが言っていることは間違ってはいない」、「わたしは柔道を少しやってきた。彼が言う通り、かなり自信がありそうだ。かかってきなさい」と背広を脱ぎます。

 鮫島は正拳を繰り出しますが、その腕を手繰って見事に一本背負いで投げて見せます。

 鮫島は入社したいが条件があると言い出し、吉岡と話します。「仕事を選びたい」というのです。杉本は「そんなこと認められるわけないだろう」と一言の元に否定しますが、吉岡は「二人で話したいから席を外してくれ」と杉本を追い出します。

 結局、吉岡は鮫島の要求を上層部に挙げます。社長(池部良)は、会社の包容力テストだなと受けることにします。

 しかし、新人に特権を認めたことは社内で波紋を呼び、先任たちが同じ権利を主張して吉岡の所にやってきます。吉岡は、「採用されないリスクを冒して意見を主張した彼と、それがうまく行ったのを見て尻馬に乗っかろうとする君たちは全然同じではない!」と一喝します。

 すると先任たちは集団で鮫島を待ち伏せて襲います。これは放置できないと見た社長は吉岡の所に来て「人間関係が悪くなるのは放置できんだろう。だが、首にする前に、なぜ君が彼の要求を上げようと思ったのか聞いておこうと思って」と尋ねます。

 吉岡は「鮫島になぜ仕事を選びたいのか聞きました」と言って説明します。

 鮫島は前職で課長代理でしたが、会社上層部の命令で子会社の特許を収奪するために子会社の倒産を仕組んだというのです。あんな仕事をしてはいけなかったと思っています‥だから、指示に従うだけでなく自分で納得できる仕事を選びたいのです。

 画像の右端が社長を演じる池部良です。この人は、鶴田浩二の告別式で弔辞を読みました。戦中派同士、本作での上司。

 結局、吉岡と社長は、鮫島を他の現場から離れた奥多摩の研究所の夜間警備に異動させます。

 ここまでで半分です。

 後半は、この研究所の夜間警備に杉本と鮫島が行ってからの話しになります。

 杉本は研究所の裏の通りを女子寮の工員たちが早朝と深夜に通過するのをウォッチします。

 ところが、ある夜、鮫島が巡回中に女の叫ぶ声を聞いたと言い出します。しかし、二人は警備範囲外である裏の道までは行きませんでした。結果として痴漢に襲われた女性工員は全治一週間の怪我を負いました。

 事情を監察に来た吉岡は、「なぜ裏の道まで警備してやらなかった? 仕事の範囲なんてはみ出せ!」と二人を叱ります。特に鮫島には、「君の言っていた仕事を選びたいというのは、こんなことなのか?」と怒鳴り付けます。

 杉本は「契約通りにやらないで、研究所に侵入されたらそれこそ大変なんだから裏の道まで回るこたねえよ」と主張しますが、鮫島は「俺は司令補の言うことはもっともだと思った」と、巡回ルートの範囲を越えて裏の道まで見回り、再び襲われる女性の悲鳴を聞きます。

 二人で現場を挟み撃ちにしましたが犯人はナイフを振り回して威嚇したため取り押さえられませんでした。

 吉岡は二人に謹慎10日を言い渡し、「犯人の顔を見たのは君たち二人だけなのだから、謹慎中に二人で犯人を捜してみてはどうか?」と提案します。

 二人で張り込んで5日目、杉本は吉岡と悦子が来るのを見付けました。

 悦子は「もうやってないかもって言ったんだけどね、司令補が行くっていうから」

 4人は近くの蕎麦屋に行き、いちばん高いメニューの天婦羅そばを頼みます。すると後から一人の男が入って来て、その瞬間に鮫島の表情が変わります。

あいつだ、急に振り向くなよ」

 杉本はすぐにも振り向きたいのですが、一応辛抱した上で、おちゃらけて勢いで振り向いた体で振り向きます。男と目が会い、男の側も気付いて逃げ出します。それを追う杉本、鮫島、そして吉岡。悦子はそばやの払いを済ませてから追ってきます。

 男は廃車置場に逃げ込み、それを三人がかりで追い詰めて取り押さえ、警察に引き渡します。

 帰りの京王線の車内で吊革につかまって立つ鮫島と吉岡。鮫島は呟きます。

「後味が悪いもんですね」

 吉岡は黙って頷きました。

 と言う話しです。戦争を生き残って後は余生と思って過ごしている吉岡と、今の人生を納得のいくように生きたいという鮫島の二人の摩擦が主題の回ですが、山田太一らしい答えは視聴者に考えさせる脚本が独特の重さを持っている本シリーズらしい回でもあります。

 あまり間を置かずに次の「冬の樹」へ進みたいと思っています。