☆ファウンデーション対帝国を読む

 ファウンデーション三部作その2です。

 45年ぶりくらいの2回目だと思います。

 前回、書いた通り、あまり心象が良くなかったのですが、今回、1から一気に読んだら、意外にもミュール編のリーダビリティも思ったより良く、楽しく読み終われたので、予定外に☆を付けました。

 ミュール編の冒頭は、世襲制になったファウンデーション市長職に対して叛乱を企図する自由貿易商人たちから始まります。セルダンの予想した危機は、この叛乱だったのですが、新興勢力であるミュールの登場で叛乱は延期に。そして、時間霊廟が開いた時に、セルダンがミュールではなく叛乱の話しをし始めた時にファウンデーションは絶望に包まれ、世襲三代目の市長は直ちに降伏してしまいます。

 その後、主人公たちは落ち延びていくのですが、いく先々が次々に陥落します。かれらが不幸を運んでいるのでしょうか?‥というあたりが、割と上手く書けていて、アシモフミステリーの中では出色の出来栄えだと思います。

 もちろん再読なので、その答えをこちらが知ってしまっているという大いなる問題は否定できませんが。

p27

「どのようにして、それを出すのですか?」

「わかりきった方法によってです。わたし(ベルリオーズ将軍)なら探検家になることができます。お話のファウンデーションなるものを見つけて、この目で見ることができます。二つあるといわれましたか?」

p110

「本気だよ」デヴァーズは興奮して怒ったようにいった。「いいかい、最近の皇帝の十人中九人までは、大物意識を持った将軍のだれかに、喉を掻き切られるか、心臓を吹っ飛ばされるかしているんだぞ。あんた自身何度もおれにそう話したじゃないか。皇帝じじいはリオーズが目を回すくらい早く、われわれを信じるだろうよ」

p127

「ちょっと待って」バーは熱心に続けた。「状況を点検してみましょう。弱い将軍だったら、明らかにわれわれを危険に陥れることはできなかっただろう。弱い皇帝の治世の強い将軍だったら、やはりわれわれを危険に陥れることはできなかったろう。なぜなら、その将軍はもっとずっと収穫の多い目標に向かって兵を進めたでしょうから。事実が示すように、過去二世紀の皇帝たちの四分の三は、皇帝になる前は叛乱を起こした将軍か太守だった。」

p133

ザ・ミュール 銀河系史にとってかれに比肩しうる重要性をもつ人物で、これほど素性のはっきりしない人物はいない。本名不詳。若いころの経歴も憶測の域を出ない。もっとも有名になった時期のことさえも、主として敵方の目を通じて、そして基本的に、ある若い花嫁の目を通じて、われわれに知られているにすぎない‥。

p149

「しかし、われわれがかれらに拍車をかけたら?」

「どこに向ってですの? 原子炉の中にですか? いったい何を使えば拍車がかかるのですか?」

「じつは、ひとつあるんだ-新しい拍車がね。ここ一、二年、ミュールと呼ばれる不思議な男の噂が流れている」

p158

「きみの報告は全部読んでいる。続けて!」

「閣下、自分は二カ月前に戻ってまいりました。その時には、戦争が差し迫っている気配はありませんでした。考えられるいかなる攻撃を撃退できる能力が、十二分に備わっているということ以外に、なんの兆候もありませんでした。ところが、一カ月まえに、得体のしれない金持の軍人が戦わずしてカルガンを征服したのです。それまでカルガンの将軍であった男は明らかにもう生きてはおりません。」

p168

「あれ、おかしな男だわ」ベイタはおもしろそうに言い、トランはおもしろくもなさそうに相槌を打った。道化師はもうよく見えるほど近くにきていた。そのやせた顔は中央の鼻に向ってくしゃくしゃと縮まり、まるで、肥沃な平原に、ほとんどは握力がありそうな肉の突起がついているように見えた。

p188

  かれらはそれを知っているが故に長くは生きられないだろうからね。生き残っているものは、もうほとんどいなかった。かれらは、その赤ん坊が三十年前に生まれたこと、母親が死んだこと、そいつの変わった少年時代を覚えていた。ミュールは人類ではない!」

p221

「このヴィジソナーが、その第一歩だ。かれ(道化師)はこれが弾けるという。そして、今の反応を見ると、これがかれの生活の大きな喜びのひとつだということが、よくわかる。だから、演奏が上手かろうと下手であろうと、おもしろがって褒めてやってくれ。それから、おれに対して親しみと信頼の態度を見せてくれ。特に、おれのリードにうまく従ってほしい」マグニフィコをちらりと見ると、かれはソファーの隅にうずくまって、楽器の内部を急いで調整していた。かれはそれに完全に没頭していた。

p238

 (セルダンの立体像)では、当面の問題を取り上げることにしよう。ファウンデーションは初めて内乱に直面した。いや、もしかしたら、直面の最後の段階にある。現在まで、外部からの攻撃は適切に撃退されてきたが、これは、心理歴史学の厳密な法則によって、不可避的にそうなっているのだ。現在の攻撃は、ファウンデーションのあまりにも規律のない周辺グループによって、あまりにも権威主義的な政府に対して、おこなわれている。この過程は必要であり、結果は明らかである」

 聴衆の威厳が崩れはじめた。インドバーは椅子から腰を半分浮かした。

 ベイタは身を乗り出して、困惑のまなざしで見つめた。偉大なセルダンはいったいなんのことをいっているのだろう? 彼女はいくつかの言葉を聞き逃した

ベイタはささやいた。「なぜ、かれはミュールのことを話さないの? 貿易世界は叛乱などけっして起こしてはいないのに」

 

 エブリング・ミスが真赤な顔をしてランデュの隣にいた。かれは叫んでいた。「セルダンは狂った。危機を間違えている。きみたち貿易商人は内戦を計画していたのか?」

 ランデュはかすかにいった。「確かに計画していた。しかし、ミュールの事件が発生したので取り消したのだ」

「では、ミュールは付け加わった要素なのだな。セルダンの心理歴史学では対策が考えられていなかったものだ。おや、どうしたんだ?」

 けたたましいサイレンの音が音階を上下した。

「宇宙爆撃だ」

p278

 ベイタがささやいた。「ファウンデーション。それからヘイヴン。災禍はわたしたちに触らずに、追いかけてくるみたいね。わたしたち、いつも間一髪で逃れるみたい。これが永久に続くのかしら?」

p308

「あれで充分だったわ。あなた皇太子をノックアウトしたことを知っている?」

 マグニフィコは大きなパイのかけらを口いっぱいにほおばりながら、陰鬱にいった。「あいつを殺したのです、奥さま」

p322

 ブリッチャーは丁寧な礼の言葉とともに、お茶を受け取った。「ミュールは事実ミュータントだ。その変異の性質そのもののために、かれを打ち負かすことはできない」

「なぜ、その変異とはなんだ?」トランは皮肉なユーモアをこめて尋ねた。「たぶん、今度は教えてくれるだろうな」

p326

 最近の七年間で、かれは新帝国を確立してしまった。言い替えれば、セルダンの心理歴史学があと700年かけなければ達成できない事を、かれは七年間ですべてやってしまったことになる。

p346

「マグニフィコ」ベイタは厳しくいった。「上にいきなさい!」

 道化師はしぶしぶ立ち上がり、悲しい目をミスに注ぎながら、一歩あとずさりした。

 ミスは弱弱しく身振りをした。「かれはいい。いさせてやれ。ここにいろ、マグニフィコ」

 道化師は急いで腰を降ろした。ベイタは床を見つめた。彼女は下唇をゆっくりゆっくり噛んだ。

 ミスがしわがれた声でいった。「第二ファウンデーションはもし未成熟のうちにミュールに攻められなければ、勝つことができると、おれは確信する。それはみずからの所在を秘密にしてきた。その秘密は維持されなければならない。それには目的があるのだ。きみたちはそこに行かなければならない。」

 トランは苦悶の叫びに近い声を上げた。「聞いている、聞いている! 教えてくれ、エブリング。どういくんだ?どこにあるんだ?」

「今それを教える」

 しかし、ついにかれは教えなかった。

 ベイタが氷ついたような青い顔で、原子銃を持ち上げて、撃ったのだ。ミスの腰から上がなくなった。そして後ろの壁にぎざぎざの穴が残った。力の脱けたベイタの指から原子銃が床に落ちた。

p349

「わたしたちの跡をつけてくる災難のことよ。前にもその話をしたでしょう、トリー。覚えてない? 敗北がいつもかかとのうしろを噛んでいるのに、実際には、決してわたしたちそのものに嚙みつかない、ということを?ファウンデーションにいた時には、独立貿易商たちがまだ闘っていたのに、あそこは屈服してしまった。しかし、わたしたちは間一髪でヘイヴンに逃れた。そして、ヘイヴンにいた時には、他の世界がまだ闘っていたのに、あそこが屈服した。そして、またもや間一髪で脱出した。ネオトランターにいった。そして、今ではあそこは疑いなくミュールと結びついている」