7日は、高尾紳路ナショナルチーム監督と、高尾監督が最近の若手の中でも特に強いと絶賛する酒井六段の対決でした。

酒井六段は力戦派ということで、激しくなるかと思いましたが、案に相違して中盤までは高尾九段が力を蓄えて打って、意外に穏やかな展開に。しかし、中盤を越えた辺りから酒井六段の力が発揮されてきてじわじわ優勢に。黒は勝負手を求めて打ち続けましたが、最後は投了となりました。

14日は、ご贔屓の林漢傑八段と、広瀬七段でした。
冒頭の挨拶で林八段が、ヒロシの芸をマネた「漢傑です」をやってみせて、驚かせてくれました。広瀬七段に現在4連敗中という自己韜晦のネタで、あんまり見ていて楽しくありませんでしたが。で、この碁も負けてしまって5連敗。まだ老け込むような年でもないと思いますが、若手に追い越される世代にはなったということなのでしょうね。
碁の方は、両者とも地に辛い棋風ということでしたが、林八段は中央模様を囲わされる展開(つまり白が地合いで先行)となって、この段階で作戦負けしていたようです。
下辺で両者の攻め合い模様の大きなコウが発生して、一時は混戦となりましたが、広瀬君が明るい判断でコウを譲ってもコミ掛かりで残ると判断して局面を単純化していき逃げ切りました。
解説は天才肌と言われる沼館七段でしたが、割と自信がなさそうな物言いに終始して責任回避していて、ちょっとがっかりしました。沼館先生も、広瀬先生も、同じ藤沢一就門下なんですね。沼館解説者の広瀬評は、「ちょっと普通の人が気が付かない手を打つんです」でした。

21日は、山下九段と瀬戸九段でした。
対戦成績は大きく山下九段が勝ち越しているそうで、山下先生が平成四天王として強かった時期に同年代で当ったのだなと思いました。
解説は三谷八段でした。あまり三谷先生を良く存じ上げないのですが、講座もやったことがあるということで、明解、快活な解説ぶりで良かったです。
ただ、この碁は眼のはっきりしない石がたくさんできて、焦点がどこにあるか判りにくい展開がずっと続き、だいぶん苦労されていたようです。
瀬戸先生が左辺と上辺の白石を分断した所で良くなったかなと思っていたのですが、実は分断した側の中央の黒も大きいばかりで目が不確か。山下先生のお得意の自分が苦しいのは無視して弱そうな相手を攻めてしまって混戦させる手法が功を奏して、気が付けば大ヨセはほとんど白が打って、じわじわ勝率を上げて行き、最後は黒の投了となりました。
28日は、2回戦の最後に満を持して前期優勝者の余八段が登場、小池七段を迎え撃ちました。

解説者は、当方のリクエストに応えていただけたのか、関西棋院の清成九段でした。清成先生の余八段評が面白かったです。以前は、真剣に読む余り碁盤の上にかぶさってしまって、中継画面が見えなかったのが、NHK杯になったら貫禄が付いたのかそういうことがなくなったと。それに対して安田さんが「今は表三段がかぶさっていますね」と言うと、「じゃあ、表君も一度NHK杯を獲ると変わるかもね」とおっとりと応じていました。
途中、AIが急場を手抜く推奨手を示すと、「人間様には思いつけませんわな」とやんわりとAI絶対でない見解を示されて、個人的には大いに同意しました。
碁の方は小池先生が下辺で損を先にして中央の白への攻めに期待を賭けましたが、あまり上手く行かずにアマくなって劣勢に。その後も余NHK杯が終始、地合いを厳しく稼いで優勢を広げてゴールインしました。余さんの快心局かと思います。逆に小池先生には残念局でした。
清成先生は小生と同世代の63才になられ、すっかりロマンスグレーの紳士になりましたね。五段で新人王戦の決勝に出てきた時の豪腕ぶりは見せなくなり、かなり渋い碁になりました。関西棋院も世代交代が進んできて、対局者としてはなかなか登場できないかと思いますが、マイルドな解説ぶりは健在。今後も画面に登場して欲しいものです。NHKさん、よろしくお願いいたします。