11月のNHK杯囲碁トーナメント

 2日は、横塚七段と大竹七段の七段対決。解説者は、名古屋の中野寛也九段でした。
 中野先生の解説は久しぶりですね。以前は時折名古屋対局でお見かけしていたのですが。仲根先生や、下島先生を使うより、中野先生の方が個人的にはうれしいです。
 あまり承知していなかったのですが、筆者が囲碁界から離れていた時期に小林十段に挑戦して番碁に出たことがあるのだそうで、打てていた時期には実力者だったようです。
 NHK講座も担当したことがあり、人呼んで「戦い王子」だとか。著書に「戦って勝つ囲碁」があるのだそうです。現在56才。小県先生が61才、彦坂先生が63才、山城先生が67才であることを考えると、もうひと働きしてもらわねば。
 久しぶりに解説を伺いましたが、まず危なげないですね。ただ、本局は渋い碁になって一目半だけ横塚君が残しましたが、こういう碁の解説には「戦い王子」は不適だったかも。大竹平明流を解説するのにも力戦家は、ちょっと違うかなと思いますし。
早碁は荒れることも多いので、中野先生の解説がふさわしい対局は本棋戦には多いと思うのですが、今回はたまたまそういう展開にならなかったですね。
 とは言え、名古屋の解説者難からすれば、来年もご登場いただきたいものです。

 9日は、張栩九段と、関西棋院の田中君でした。
 解説は片岡聡先生。田中君が地を稼ぎ、張栩九段は意図してではないかと思いますが、大模様を張る展開に。そこで田中君がドカンと打ち込んでのシノギ勝負。
 片岡解説者が言っていましたが、最近はAIがシノギ持ちなので、シノギ志向の若手が増えたと思います。田中君としては作戦通りなのでしょう。張栩九段は少し持て余してしまって敗れてしまいました。張栩九段でさえ、なかなか初戦を突破できなくなっており、時代の移り変わりとは厳しいものだと思いました。

 16日は、本木九段と志田八段。解説はスレッジハンマーを振り回す女子高生だった上野愛沙美女流名人。
 上野さんは初解説ということで、少し座りが悪かった感じですが、彼女らしさは出ていました。それを好きかどうかと言われると、個人的には首を傾げてしまうのですが、まあ合格点としておきますので、また来年も出て来てください。
 冒頭挨拶で本木先生が、細かい碁になるといつもやられている印象と言われ、実際対戦成績でもリードされているそうですが、本局では細かい碁になりましたが、本木九段が一目半残して一矢報いました。
 ハイライトは終盤に入って細かい形勢の中でのコウ争い。上辺のコウを争っている最中に、本木先生が左辺にもう一つコウを作って、これを無限のコウ立てにして上辺を謝らせ、最終的には左辺も謝らせて、少しだけ残しました。
 上野解説者が、しきりに「冷静ですね」を連発していましたが、裏を返せば自分だったらエイッ!とやってしまいますということなのでしょうね。
 まあ早碁では、それもありかと思うわけですが。

 23日は、鶴山八段と、富士田八段の八段対決。解説は、これまたお久しぶりの張豊猶九段でした。
 前半はAIで布石研究が手厚い富士田八段が優勢でしたが、中盤で形勢が逆転、以後は少しずつ勝率を伸ばしていきました。
 大ヨセが終わった所で豊猶解説者が安田さんに「どっちが勝っています?」と訊き、それに安田さんが「白が勝っています」。さらに豊猶先生が「それは勝率のグラフを見て?」と訊くと、「いえ、計算しました」と。さらにさらに「では何目くらいでした?」と訊くと、「白が三目か四目いいですかね」と。
 そこまで聞いて「だいたい良い線ですね」とお褒めの言葉がありました。最後は作って四目半の差でしたので、安田さんの計数能力が非常に高いことが満天下に知られたかと思います。
 豊猶先生は、あまり明確な個性を示さない棋士でこれまで印象が薄かったのですが、人柄はとても良い人なのだなとこのやりとりで思いました。同じことを豊猶先生の対局時にどなたかも言っていたと記憶しているのですが詳細を思い出せません。

 11月は5回ありました。30日は、芝野十段と河野臨九段です。
 解説者は、小生のご贔屓解説者の一人、首藤瞬先生でした。
 殺し屋の異名を取る芝野君ですが、本局では河野先生が中盤に白の弱い大石の急所にいきなりピタリと付けて眼型を奪いに行く強襲に出て満場を沸かせてくれました。
 首藤解説者は、これはスゴいですね。これが成立すると白は大ピンチなんですが、こんな手あるんですか? 面白いですねと岡目八目を決め込んでいました。
 この場面に限らず随所で「面白いですね」を連発して、非常に楽しそうに解説されていました。
 終局後のまとめは、かなりレベルが高くて、あの説明では級位者は解らないのではないかと不安を感じましたが、個人的には非常に満足度の高い解説でした。
 今期はなかなか出てこないので、すわ準決勝以上に回るのかと思っていましたが、二回戦の最終局でしたね。