×カササギ殺人事件を読む

 図書館です。
 アンソニー・ホロヴィッツ。

 このミステリーがすごい!、週刊文春ミステリーベスト10、本格ミステリ・ベスト10、ミステリが読みたい! の各海外部門4冠。国内ミステリーランキングを完全制覇したベストセラーで、非常に長いこと書店では平積みになっていました。
 と言うことで、読んでは見たいと思っていましたが、近年、ミステリー畑から遠ざかって久しいので敷居が高く、今年の図書館の貸出マラソンの冊数が伸びないので、思い立って借りてみました。さすがに今となっては普通に館内在庫ありました。
 往々にして、これだけ煽られると期待過剰になってしまう訳で、SFで言えばヒューゴー、ネビュラ、ローカスの三賞制覇と言うのと同じです。
 正直に言って、「いつ面白くなるのだろう?」と思いながら機械的にページをめくり続けて行き、上巻は終わってしまいました。下巻に入っても状況は改善せず、視点人物のスーザンに、真犯人が「君に話さなくてはと思っていた」と言い出してしまって、「え、もうクライマックス?」と慌てました。

 結論から言えば、クライマックスはさすがの盛り上がりと意外性で、なるほど本書がミステリーファンに大受けだったのも判るようになりました。そういう意味では「×」を付けるのは厳しすぎるのですが、もう一度、最初から再読できるかと問われれば明らかにNOなので、個人的なガイドラインで「再読に値しない」ものは「×」としているのに従って×といたしました。
 ホロヴィッツは、本書を筆頭にこのミス1位を4年連続で取り、5年目にして2位に陥落するも引き続きトップを争い続けています。こんなに高打率の作家はなかなかいないでしょう。ただ、本書しか読んでいないし、本書に×を付けた人が言うことですので、割り引いて読んでください。
 この作者の別の作品を読んでみたい気もしますが、少し疲弊してしまったので間をあけようと思っています。
下巻
p141
「ここしばらく、きみに話さなくてはと思っていたんだよ、スーザン-アランのことが起きる前からね。言ってみれば、この事件は棺に打たれた最後の釘のようなものだ-状況を考えると、不思議な比喩かもしれないがな。とにかく、わたしももう六十五歳になり、そろそろ仕事を減らしてくれと、エレインにもずっとせっつかれていてね」エレインというのは前にも説明したかもしれないけれど、チャールズの妻だ。ほんの数回しか会ったことはないものの、どうやらあまり出版界に興味はないらしい。
p280
あんな何もない田舎の退屈な私立校で、たいして好きでもない子どもたちに向かって授業をし、子どもたちのほうも大学へ進んだらさっさとアランのことなど忘れてしまう、そんな生活からいっこうに抜け出せないことに、どうにも耐えられなくなっていたのよ。そんなとき-ちょうど、いっしょに書店へ行ったときだったわね-わたしはあの人に、もっと単純でわかりやすいものを書いてみたら、って勧めたの。あの人はずっと、パズルがすばらしく得意だった-クロスワードとかね。トリックやだまし絵も大好きだったの。だから、あなたはミステリを書いてみるべき、って言ってみたのよ。
p303
 ついにわたしは編集者ではなく、探偵という立場に身を置こうとしていたのだ。「アラン・コンウェイは、アティカス・ピュントを憎んでいたんです。アランは自分を偉大な作家だと思っていました-サルマン・ラシュディやデイヴィッド・ミッチェルのように-読者から偉大な芸術家としての評価を受けられる作家だと。でも、実際に自分がしていることは、金のための作品を書くことでしかなかった。ミステリのおかげで大金持ちにはなれたけれど、そういった作品をアランは軽蔑していたんです」
p312
「わたしがとてつもない執念を感じるのは、アランはこれを、そもそもの最初、アティカス・ピュントを生み出した日から計画していたということです。自分の作品に自爆装置を仕掛け、十一年にわたってタイマーがかちかちと時を刻むのを眺めているだなんて、そんな作家がどこにいるでしょうか?」
p325
 あのとき、アンドレアスが会社に来てくれたのは、日曜の夜の言いあらそいを気に病んだあげく、花を抱えて不意打ちで迎えにいきいっしょに歩いてレストランへ行こうと思いたったからだという。そんなロマンティックな思いつきのおかげで、わたしは死なずにすんだのだ。