×化石の城を読む

bqsfgame2012-08-15

山田正紀の第3長編。
先日入手したばかりで初読。
リーダビリティは高く一息で読み終えた。
しかし、帯やあとがきにはSFだと書いてあるが、そうした要素はほとんどない。 むしろ、1968年のパリのゼネストプラハの春に青春を賭けて、カフカの幻の城を移築するという妄想に殉じる青春小説。 その意味では1950年の日本を舞台にした青春小説シリーズ、影の艦隊の前身と言っても良いかも知れない。
SFでもミステリーでもないが、山田正紀らしいと言えば言える。
ただ、全体として影の艦隊が後に書かれたことを考えると、本書の存在意義は非常に薄い。
なんと言ってもパリのゼネストプラハの春も今の読者には説明なしでは理解不能だろう。それにどうして日本人が青春を賭けるのかも共感しにくい。影の艦隊があれば本書は不要になってしまっていて、本書が再版されていないのも理由なきことではないと納得してしまう。