○リーダーシップを読む

bqsfgame2017-12-28

本の題名から作者を当てる問題としては、かなり難しい。誰が書いても不思議ではありません。政治家、野球監督、企業トップなど。
正解は、ルドルフ・ジュリアーニ・元ニューヨーク市長です。
実は、別件で「割れ窓理論」の本を読みたいと思い探したのですが、ケリングの学術書は読みにくそう。理論書より実践書の方が面白かろうかと思い、犯罪都市ニューヨークを立て直したジュリアーニ本に辿り着きました。
筆者が語学研修でニューヨークに2ヵ月間ホームステイしたのは、1999年のことです。時の市長がジュリアーニ。その頃にはニューヨークは安全な街になっていて、夜9時にタイムズスクエアを歩いていても、地下鉄でアッパータウン方面まで行っても、セントラルパークの中心部まで入って行っても、危険と言う印象は受けませんでした。
しかし、その数年前までは、英会話学校の教師曰く、「バッドマンのゴッサムシティより酷かったんだよ」という荒れた町でした。それを短期間で立て直したのがジュリアーニで、彼が注目して対策の基盤にしたのが割れ窓理論でした。
と言うことで読んでみましたが、期待したのとは路線が違いました。
本書はジュリアーニの退任直後に書かれており、退任直前に起こったのがセプテンバーイレブンです。
ですので、本書は、
1:セプテンバーイレブンに当ってトップとして指揮を執った実録本
2:ニューヨーク市という巨大構造物をマネージメントした実録本
と言うのが主軸になっていて、犯罪対策は2の中の一部でしかありません。
とは言え、実際に意思決定をしてきた人の本は、やはり面白い。
ちょっと気になるのは、
3:少し自慢が過ぎてやしないか?
4:典型的なモーレツ上司なので、人として共感しにくい
という2点でしょうか。
あと意外だと思ったのは、
5:会議を通じたマネージメントを軸にしている
と言う点です。
近年の日本では、会議の非生産性が批難されることが多いので、会議こそがマネージメントのエンジンだったと言う主張は驚きます。
それ以外では、父の影響が大きいこと、ブルックリンに住んでいてヤンキースファンだったので少年時代から身の危険を感じることが多くボクシングを教わっていたことなどは、興味深いです。
また、結婚式には必ずしも出席しないが、葬儀には必ず出席するようにしてきたというルールも興味深い。故人がどれほどニューヨークにとって大事な人だったかを遺族にも参列者にも明確に伝えるために自分が出席することほど効果のあるものはないという主張です。それも、さすがに全部は出席できなくなったと言うのは、貿易センタービルの惨劇の大きさを改めて感じます。
マネージメントの実践本としては、ガースナーの「巨象も踊る」に見劣りしますが、それでも歯応えはあります。少しだけお薦め(笑)。