2つの進歩:物語と収束

ルーンバウンド」が「タリスマン」と比較してゲームデザイン的に進歩しているのは、物語としてのまとまりがあることだろう。
支配の王冠を求める旅をしている冒険者たち‥という設定こそあれ、「タリスマン」の様々な要素は全体として一つの一貫した物語をなしていたとは言いがたい。特に顕著だったのは拡張キットの「シティ」で、冒険者たちとは別に日常生活を営む人々がいることを描き、下手をすると冒険者も本来の目的を捨てて都市で就職して違う人生観で暮らし始めかねないとぼけた拡張キットだった。この「なんでもあり」な無節操で無尽蔵とも言える拡張性が「タリスマン2版」の魅力でもあったのだが、作品が一つのストーリーラインに乗っていなかったことは事実だろう。
それに対して「ルーンバウンド」では、プレイヤーたちが難度の低いアドベンチャーカードから順に難度の高いアドベンチャーカードに移っていくようになっている。そして、それぞれの段階のアドベンチャーカードごとに、ストーリーが進展していくようなイベントが起こり、出会う敵もそれらしいものが順に出てくるような工夫がされている。
画像が小さすぎて恐縮だが、左から2段階目のデックに出てくるヴォロケシュ卿、3段階目のデックに出てくるマーゴスの雛、最終デックに出てくるハイロード・マーゴスである。
邪悪な最凶のドラゴン・マーゴスを甦らせんと策動するのがヴォロケシュ卿とその同盟者たち。それによってドラゴン一族が復活しマーゴスの雛が孵り、ドラゴンと人間のハイブリッドが出没し始める。最後には最強のドラゴンたちドラゴンロードが各所に割拠し、その中でも最強のものマーゴスが姿を現す。
その途中の過程で、戦う人々は勇者を求め、凶兆と戦い、団結し、時に対立し、敵の猛攻に倒れるものもあり、そして最後の戦いへと向かっていく。
こうした作りのためゲームが進行していくと、着実に進展し、大体、終了のタイミングが見える‥というのも「タリスマン2版」より「終わりまでプレイできるゲーム」として優れていると思う。
日記に書いた通り先日のプレイでは多少のルールの齟齬などもあって4人プレイで6時間近く掛かってしまったが慣れれば4時間くらいで十分やれそうだ。
ただし、こうした物語性と収束性の逆の効果として、初見と比べて二回目以降は物語の進行が見えているので、打算的なプレイも起こりかねない不安は感じた。また、それほど本体だけではアドベンチャーカードも枚数がそれほど多いわけではないので、新鮮味に欠けて来るかも知れない。その意味で拡張キットが期待されるのは「タリスマン」同様、必然の展開だろう。
このときに「タリスマン」は無節操で無尽蔵だったのに対し、「ルーンバウンド」はシステム的にストーリーの整合や収束性を持っているので、そこを維持したままどう拡張するのかが興味深いところだ。拡張キットを早く見て見たいものだ。
とまれ、内容的にはついに長きに渡ってファンタジー・アドベンチャー・遍歴ゲームの雄だった「タリスマン」を追い越すゲームが登場してきたと言って良いだろう。これさえあれば、無理をして「タリスマン」の出物を探したりする必要はコレクターやファンタジーゲーム専門家以外の人にはもうないだろうと思う。