○タイタンのゲームプレイヤーを読む

bqsfgame2006-10-18

少し間が空いてしまったがPKD。
奥付を見たら日本出版が1990年で既に16年前。随分と温存してしまったものだ。
タイトルの通りゲームをプレイする人々がモチーフ。核戦争で子孫を作る能力を劇的に失った人々。残された人々の一部は広大な土地を少数で所有し、その土地の権利書を賭けてモノポリーとダウトを合わせたようなゲームをプレイして土地をやりとりしている。その結果として人々は移動し、それにより結婚関係はシャッフルされて子孫を作れる確率的に極めてレアなケースを作り出そうとしている。そして、この地に潜入してきているタイタン星人たちの陰謀。
設定は非常に面白く前半はディック作品の中でも抜群に魅力的。中盤からゲームに勝つために禁止されている超能力者をゲームに導入しようと言う陰謀や、殺人事件が勃発してストーリーは急転する。そこにタイタン星人の陰謀が絡んできて世界は見た目とは違う構造を示し始める。ただ、この違う構造が次々に提示されるのだが、少々、不安定で説明不足というか説得力不足。ただ、その底が割れる前に、また別の構図がどんどん提示され終わりまで読ませてしまう。
破綻していると言うほどではなくB級SFとしては魅力的に書けていると思う。ただ、PKDとしてはもっと完成度が高くあるか、もっと破綻していて欲しい気がするので少し中途半端な印象はあるかも知れない。ディック本人が本作を好きではなさそうなインタビューの受け答えをしていたのが読むのが遅れた理由の一つだが、そういった中途半端さを本人も感じていたのかも知れない。