○サマセットドリームを読む

bqsfgame2013-05-27

NW−SF誌のウィルヘルム特集号。そのメインディッシュが、原稿用紙100枚を越える中編、サマセットドリームである。
この中編は先頃、中村融氏のSFスキャナーダークリーのNWSFアンソロジーの架空目次の話しでも登場した。
http://sfscannerdarkly.blog.fc2.com/blog-entry-812.html
サマセットは架空のアメリカの田舎町。都会から病気の父の様子を見るために帰省した女性心理学者は、この街の人々を題材にした心理学実験を試みる学生たちに出会う。その実験は、田舎の人たちに夢日記を付けてもらい都会の人の夢と傾向の違いを見出していくと言うものだった。彼女は自分でも被験者として参加することする。
非常に地味な展開で、田舎町、心理学実験を淡々と描いている。事件らしい事件も起きない。ウィルヘルムの「クルーイストン実験」に近いと言う指摘は適切だが、あれよりもさらに地味である。一応、種も仕掛けもあるのだが見てのお楽しみ。ウィルヘルムらしさからすると、どこかのアンソロジーに再録されて読めるようになって欲しい気がする。しかし、当代一のアンソロジスとの中村氏が実現できなければ、とても難しそう。