○ヨハネスブルグの天使を読む

bqsfgame2013-07-28

良い意味で☆にしようかどうか迷いました。
盤上の夜で日本SF大賞を受賞した宮内悠介の第2作です。今回も直木賞候補に上がったそうです。
前作のような万人に薦められるエンターテイメントではありません。題材は現代社会。舞台は、南アフリカ、マンハッタン(9.11)、アフガニスタン、イェメン、東京です。
現代社会の闇の部分であるテロリズムの最前線を扱っています。設定に少女型のアンドロイドが空から雨のように降ってくると言う現実から遊離したSF性があります。しかし、社会描写は現実社会に密着しています。作品間で登場人物が共有されているゆるやかな連作短編集です。少女型アンドロイドは、作品により扱われ方が違っていて、単に空から降ってくる謎の存在だったかと思えば、人間の代わりに戦うテロリストだったりもします。
現代戦の陰鬱な側面に目を背けないで切り込んでいるので、好みは分かれるでしょう。ただ、残虐描写を志向していると言う訳ではなく、「それが現実だから」とさらりと描写して話しはどんどん進んでいきます。結論や強いメッセージがある訳でもなく、なんだったのかな?‥と思わせる部分もありますが、読み応えがあると言う点では前作からの期待を裏切っていないと思います。次はどんな物を書いてくるのか予想が付かなくなりました。楽しみです。