シーデビルズのルールを読む

突然ですが、S&T191号の付録ゲーム「シーデビルズ」を読みました。
南北戦争の南軍による通商破壊戦の戦略級ゲームです。要するに「レベルレイダース・オン・ハイシー」と同じ題材の先達。発売当時はかなり興味があったのですが、非常に評判が悪くプレイ不能と言われていました。結局、194号に全面改訂第2版が改めてセカンドゲームとして着くと言う前代未聞の不始末となりました。
で、タイミングを逸していたのですが、アイアンクラッドをプレイしたり、レベルレイダースが出たりで旬が再び来たように思い発掘してみました。
ルールを読んだ感想としては、意外に面白そうです。南軍の通商破壊戦は、アメリカ沿岸だけでなく、北大西洋はもちろん、さらに南大西洋を越えてインド洋や太平洋にも及びました。このため、マップは完全にワールドワイドです。1ターンは、1シーズンで、南北戦争のほぼ全期間を扱います。押しも押されもしない戦略級ゲームです。
通商破壊戦は弱者の選ぶ一種のゲリラ戦です。敵が守りきれない広すぎる海を舞台に、敵のアキレス腱である通商船を狙って沈めると言う、見方によっては卑怯な作戦です。それにも関わらず、ある種の浪漫を感じさせるのは、蟷螂の斧とでも言うような力及ばずとも戦おうとする姿勢が判官びいきの日本人好みなのでしょうか。
広い海、強力な北軍艦隊、少数精鋭の南軍襲撃船と言うシチュエーションです。このゲームのシステムは、なかなか合理的に感じられます。南軍だけが行動をプロットし、その後で北軍は普通に盤上を移動します。それから南軍がプロットした行動を実行し、北軍艦船のいるエリアに入ると探索チェック、発見されれば逃走チェック、逃走に失敗すれば戦闘となります。
北軍艦隊は強力ですが、全世界の海を隙なく守るのは不可能と言うものです。なので、南軍は北軍艦船の配置を睨んで弱そうな所を襲撃します。これだけだととても襲撃船を捕まえられそうな気がしませんが、実は南軍艦船の行動のも様々な制限があります。
1:各艦船は毎ターン給炭しなければなりません。そのためには、航路上の利用可能な港に立ち寄る必要があります。1ターンが長いので実は給炭回数もかなり多く、ターン中に3回も4回も給炭しなければなりません。
2:当り前ですが成果を上げるには襲撃しなければなりません。獲物が多い海域は限られており、当然ですが北軍も備えています。また、襲撃には追加移動力が必要です。
3:1ターンが長いので、艦船によりますが、数ターン海上行動を続けると定修に入らなければなりません。これができる港は限られています。
4:中立国の港は、南北戦争の進展に注視しています。南軍の形勢が良かった中盤までは、割と協力的ですが、北部が外交的圧力を掛け始めると順に南軍の利用を拒否するようになります。
5:戦時中の新造艦の多くは英仏で建造されます。定修なども英仏の港に依存する場面が多くなります。ところが、欧州の中立港の情報は北軍に筒抜けなので欧州港を出港する所で捕捉されることになります。

とまぁ、そんなこんなで南軍の艦船の移動計画は制約条件の中で組み立てます。
感じとしては、
アラバマ号の速度から見れば、向こう3ヶ月で襲撃行動が行われるのは、南米沿岸である可能性が高い。アラバマ号の燃料補給の都合を考えると、航路はブラジル沿岸に沿って、ブラジルの中立港を順に寄港することになるだろう。次の定修の必要性を考えると、アラバマ号がそのまま南下して太平洋へ離脱することは考えにくい。したがって、次の半年の間にアラバマ号は南米から逆に北上して帰ってくることになる。そうすると、我が軍が集中的に艦船を配備するべきは‥」
と言った具合です。
合理的なのは、数が多く、一方でリソースによる制約を受けにくく自由度が高い北軍をノンプロットにした所です。これによりプレイは非常にスムーズになっていそうです。南軍のプロットはパズルのように悩ましいですが、開戦時には活動するのはサムター1隻だけ、すぐに増援で来るのもナッシュビルだけで、なかなか3隻以上に増えないのでプレイアビリティが問題になるほどではないのでしょう。やってみないとわかりませんが。
残念ながら南北戦争の水上戦の別側面であるミシシッピ流域は含まれていません。ミシシッピ流域作戦は、通商破壊戦の一環ではなく北軍の南部西域進攻の一部として別に考えるべき問題だと言う割り切りなのでしょう。この辺、デザイナーのゲームの切り出しのセンスの良さを感じます。プレイして上手く機能していると、かなり良いゲームなのではないかと思います。