〇アーサー王物語(痛快世界の冒険文学12)を読む

 図書館です。

 「フランケンシュタイン」と同じシリーズ。同書の巻末広告から。

 「アーサー王」の話しはSF・ファンタジーゲーマーなので知ってはいますが、ちゃんと纏まったものを読んだことが一度もありません。そういう意味ではフランケンシュタイン同様、遅蒔きながらちゃんと教養として読んでおこうということです。

 「アーサー王伝承」は、古代イギリスの伝承で、アーサー王も、彼の国のログレスも実在したかどうか不確かです。日本の邪馬台国みたいなポジションでしょうか。

 しかし、英雄アーサー王と、その円卓の騎士については、多くの伝承があり、その公約数的な部分を阿刀田高先生がジュブナイル的に纏めたものです。それにしては、ちょっとエロいシーンが多すぎるでしょうか。イラストは加藤直之先生。

p33

 アーサー王が小舟に乗ると、小舟は目に見えない綱で弾かれているように湖面をすべってすすみ、まっすぐに剣をにぎってつきだしている腕のところへついた。

 - いったい、何者の腕なのか? -

 腕より下の部分は、青い水のなかにかくれてなにも見えない。

p43

「あははは、いくら大きくとも、たかが狼ではないか。アーサー王の軍勢が負けるはずがない」

「とんでもない。平地なら負けますまい。しかし、森のなかはやつらの王国です。しかも、めっぽうかしこい親玉がいるんです。見た者はみんな食い殺されたんでしょう。はっきりと見た者はいませんが‥。半分は人間の姿だとか。とにかくおそろしいやつです。三百や五百の軍勢くらい、たくみにさそいこんで、いちばん攻めやすいところで攻撃をしかけてきます」

p62

「いっさいを拒否する。配下となることも、貢ぎ物をおくることも。むしろ、ローマこそ、このログレスに貢ぎ物を献上されたい。ルーシャスこそアーサー王の家臣として忠誠をつくすよう命令する。私こそがローマの領土を統治する正統な王であることを、ここにあらためて宣言する。」

p119

「ぜひ着て見せてほしい。私の命令だ」

 こうまでいわれてはさからうことができない。侍女はおそるおそるマントをはおった。

 そのとたん。

「あっ、あっ、あーっ」

 マントが火をあげて燃え出す。ぬごうとしても、まるで生きているみたいに体にまとわりついてはなれない。炎をあげたままからみついている。

「消してやれ」

 アーサー王が命じたが、かんたんには消えない。侍女はのたうちまわり、全身を焼かれ、そのままみにくい姿となって息絶えた。

「おそろしいことだ」

 このおそろしいマントが届けられたことは妖女モルガンの悪意は底知れないふかさだ。

p135

「なおしてあげましょう。だが、なおるまでにはしばらく日時がかかります。そのあいだ、城にとどまって、あなたのみごとな竪琴の技を、娘のイゾルデに教えて欲しい」

 こうしたタントリスことトリスタンはアイルランドの城に滞在して傷の治療を受け、そのかたわら王女イゾルデに竪琴を教えることとなった。

p192

 ガウェインは、高々と斧をふりあげ、息をととのえ、

「えいっ!」

 緑色の首すじめがけてたたきつけた。

 ぽろん、と首が落ち、コロコロところがった。

「おみごと」

 歓声が起きる。

 だが、つぎの瞬間、首のない胴体が手をのばして首をひろいあげ、髪を掴んでかかえたかと思うと、そのまま馬にひらりと飛び乗って、

「一年後をわすれるな。降誕節の最後の日までだぞ」

 切られた首がさけび、パカッ、パカ、ひづめの音も高く消え去っていった。

「あれは、なんだ? 魔物にちがいない」

p208

 ふと気が付くと、毛布の上に奥方がおおいかぶさっている。奥方の方も、いつもよりはやくしのびこんできたのである。

「騎士といえば、武勇に優れ、婦人にやさしく、けっして婦人に恥をかかせないものだとか。きのうよりはさらにふかいお心をしめされるべきでしょう」

 目を閉じ、くちびるをさしだし、胸の肌もあらわである。

 ガウェインはゆたかな胸にふれてしまった。

「おゆるしください。これ以上はなりませぬ」

 必死の思いでさけんだ。

p237

 妖女モルガンの魔術によりグウィネビアの姿に変わったエレインと罪深い一夜をすごしてしまったことはすでに話した。ラーンスロットははげしい後悔をおぼえたが、どうじに、たとえ錯覚であったとしても、心身をつらぬいて走った歓喜はわすれられない。

p259

「ごしょうちのようにアリマタヤのヨセフは、十字架に掛かったイエス・キリストを復活の時まで守った聖人です。聖杯をはじめ、とうとい品々がアリマタヤのヨセフの手をつうじてのちの世に残されました。またヨセフの血は代々受け継がれ、ペレス王につたえられました。そして、さらにペレス王からエレイン姫へ、そのエレイン姫がラーンスロットと交わって生んだ王子ガラハッドにその血がひときわ色濃くあらわれました」

p286

「ご病気は?」

「すこしよろしいようでした」

「ふーん。たったひとりでいかれたのか」

「はい。今生の命はつきた。谷へいって休む。いつの日か、世が私をもとめるとき、ふたたび目ざめて正義をしめそう、と」

 あらゆる手段を使って、アーサー王のゆくえをさがしたが見つからなかった。