ショートゲームレビュー:南極未来戦争

bqsfgame2008-04-01

1978年にSPIから出版されたボックスゲーム。
デザイナーはフィル・コスネット。
コスネットはそれほど著名なデザイナーではなく、本作以外ではカプセルシリーズのタイタンストライク、アートオブシエージの中のAcre、モダンバトルズの中のユーゴスラヴィアなどをデザインしている程度。実質的に本作が彼の代表作と言って良いと思う。
デザイナーズノートにも触れられているが、S&Tの巻末に当時は毎号のように乗っていたゲーム企画提案の一つとしてコスネットが冗談で南極を舞台に地底人を目覚めさせてしまって戦うゲームを書いたところ、圧倒的な少数派の支持(原文通りで気持ちは分かるが矛盾した表現‥(^_^;)を受けて成立してしまい、本当にデザインすることになって大変な苦労をしてデザインしたらしい。

ゲームの概要

想定は1991−92年という当時時点での近未来。
メインのシナリオは、アメリカ対ソビエト、あるいはこれに南米連合を加えた三つ巴戦となっている。
ゲームシステムで特筆すべき点が3つある。
第一に、極めてフォッグオブウォーが強い。作戦級の陸戦ゲームでこれくらいフォッグオブウォーが強いものは極めて少数派だろう。このため敵の基地の位置は分かっているが、そこから移動を開始して出撃した部隊については、ボード上でスタックとして見えるので、出撃したと言うことと出撃した方向は把握できるのだが、その戦力の内容については意図的に衛星偵察、航空偵察、地上部隊による接触をしない限りはまったくわからない。
第二に、極めて補給ルールがシビアである。北アフリカ戦のゲームでも厳しめくらいのイメージだろうか。多くのユニットは毎ターンの通常活動のために3補給ポイントを必要とし、それを運ぶためのヴァン自体も1補給ポイントを必要とする。そこそこの部隊をヴァン補給で3ターンくらいの旅程で攻撃に出そうとすると、30補給ポイントくらいは放り込んで置かないと片道をもたせることができない。攻撃に失敗して帰還するような想定なら倍になる訳だが、孫子ではないが敵の補給ポイントを奪って現地調達するべく片道分の補給で出撃するのが往々にして現実的な選択肢だったりする。
第三に、非プレイヤーターン方式である。普通のウォーゲームと異なり、全員共通の空輸フェイズがあり、全員共通の地上移動フェイズがあり、全員共通の対地支援フェイズがある。フェイズごとにイニシアチブを決定し直し、イニシアチブに従って各プレイヤーが交代で1スタックずつを作戦行動し全員がパスするまで続けていく。
そのため、アメリカがポール基地から出撃したのなら我が軍も出撃しなければ‥というようなチェスムーブにも似た応酬が展開され、これに強烈なフォッグオブウォーが絡んで様々な駆け引きが生まれる。
[つづく]