8月のNHK杯囲碁トーナメント

 今年はオリンピックがあったので放送が不規則に。

 7月28日は、NHK杯戦男と言える結城九段と、八段好青年の一人鈴木伸二八段。

 結城九段のNHK杯の戦績は71勝、29敗なのだそうです。ちょうど百局打っていて、勝率7割越え。すごいです。6年間で5回優勝した時期などは形勢を損じても豪腕で逆転するような碁が目立ちました。

 この日の解説は柳時薫先生でしたが、同じ指摘をしていました。もう一つ追加として地に辛く、地合いで先行して置いて相手の模様にドカンと打ち込んでさばいてしまうので、攻めと言うより居直りタイプの急戦派という。なるほどと思いました。

 この日もその特徴が良く出ていて、確定地で先行して右辺の白の地模様に「そんなに深く?」と目を疑うような踏み込みを見せて右辺で居直って生きました。

 劣勢を自覚した鈴木八段が右辺を封鎖した厚みと上辺の地を斜めにつないで纏めようというのに、これも許すまじと肩付で踏み込みます。柳解説者が「ぼくが黒を持っていたら全然自信ありませんね」と言うのも構わず再び左辺に繋がってさばきます。最後に白が右上で大コウにする勝負手に対しても正確な形成判断で決定的な場面で手抜きで処理して、最後まで作って三目半の勝利でした。

 今回は見ていて柳解説者の頭の良さと言うのを非常に感じました。結城九段の棋風に対する分析。碁の展開を予想する予想力。ここで踏み込んだ解説をする必要があると判断して大盤に移って説明するタイミングの良さ。以前に趙治勲先生の著書で、「柳さんは非常に頭がよい。でも、修羅場をくぐっていないからここぞで勝負弱い」と言われていたのですが、なるほどと思いました。柳九段が、「結城先生のこういうのに胡麻化されちゃうんですよねぇ」と言うのは非常に切実に感じました。

 8月4日は録画失念。

 18日は、初の2回戦突破を目指す平田八段が、志田八段と昨年と同じ顔合わせの二回戦。

 焦点のはっきりしない状態がずっと続く碁で、ある意味では捩じり合いよりずっと難しかったです。AIの勝率が意味不明に良く揺れたので接戦が続いていたのではあろうかと思いますが、それすらも良く判らない。

 解説は横塚七段で、言語明瞭なれど焦点不明の碁なので解説に苦労していました。ヨセに入った所で、「黒がいいですよね?」と安田さんに聞いていましたが、それを聞くのは気の毒と言うものです。

 最終的に平田君が一目半勝利で初の三回戦へ。おめでとうございます。

  25日は、蘇九段対余八段と言う、苗字一文字対決。両方とも台湾出身。と言うことで、八段五人衆の筆頭、台湾出身の林漢傑八段が解説でした。

 蘇九段の位の高い独自の世界に対して余八段が厳しく踏み込んでいき混戦に。

 上辺での蘇九段の白模様への独創的な踏み込みから一気に険しくなり、手筋のドリルでは必ず見るもののプロの実践譜では見たことのない石塔絞りが出てきて上辺の黒が一気に苦しく。これをコウも絡んで左側へ逃げる蘇九段。どこかで捨ててしまった方が良かったのではないかと思われましたが、人間心理的には石が10個くらいになると、なかなか捨てられないものです。

 途中でAIが逃げられないシチョウを逃げる手を最有力で示して、その意図を漢傑八段が解き明かしてくれたのですが、なるほどと思いました。AIも漢傑先生も凄い手が見えるものです。しかし、人間心理的にはシチョウで取られた時点で意識の外に置いてしまうので、非常に気が付きにくいので実現せず。

 結局、白優勢で別れて次の争点は左下へ。ここで余八段の左下二の二に飛ぶ手で、漢傑八段が「これはシビレたでしょう」と言うと、すぐ蘇九段が投げました。

 非常に難しい碁でしたが、漢傑八段の解説の切れ味はさすがでした。