CWB:6月26日を対戦プレイする(最後)

抜群に面白い展開だったとは言えないように思うが、それでもCWBならではの問題点を随所に含んだ非常に興味深いプレイだった。
以下、箇条書きにしていこう。

1:南軍の大胆な迂回機動の実現と、北軍のそれへの対応の鈍さ
南軍の盤上の部隊は、APヒル、DHヒル、ロングストリートの3指揮官とも本シリーズで最高の評価である4を保有している。このため、現場レベルでの臨機応変な意思決定が可能となっている。これが南軍の柔軟な作戦を可能にしている。
対する北軍は、ポーターの評価は3。これは悪くなく十分。しかしながら、マクレランが上層部におり攻撃命令に消極的なため、攻撃的なイニシアチブに対してはマイナス2の修整が付く。また、前述したように北軍指揮系統の特別ルールを勘違いしていて初期命令発動し損ねたのはプレイ上、非常に大きなマイナスの影響が最後まで残ってしまった。当たり前のことだが、シナリオ特別ルールは、きちんと事前に読解しておかねばならない。

2:北軍の攻勢の不連動
北軍は西方への攻撃を、各師団司令官個別のイニシアチブにより実施した。
結果として、前述したようにマコールの攻勢開始からモレルの攻勢開始まで2時間のズレが発生した。
現場判断による個別意思決定で連携した攻撃行動を行うことが難しいのは、想像に難くない。ところが、多くのウォーゲームでは、神の目を持つプレイヤーの視点で的確な状況判断が下され、それによって各部隊は最善の行動を直ちに開始できる。このことが非常に不自然であるということは、多くのウォーゲーマーがきちんと認識できていないのではないだろうか。
CWBのコマンドコントロールシステムは、この問題点を的確に盤上に再現する。特に現場指揮官の能力が低い北軍においては、臨機応変な反転攻勢の連携は至難の技であり、今回のプレイでもその通りの結果となった。
これはプレイしていて大変にもどかしいものだが、その反面、「そうか実際の軍隊の指揮系統と言うのは、このくらいにしか機能し得ないものなのか」という目から鱗が落ちるような悟りを与えてくれる。

3:南軍の攻勢の不連動
北軍背後への南軍の迂回攻撃は実現した。その尖兵となったDHヒルは16時から攻撃を開始しゲーム終了(19時)まで攻撃を継続した。
これに増援として到着したロングストリート師団は18時に到着したが、攻撃中止命令チェックに失敗して18時半には攻撃を中止してしまった。自軍の兵員の損害を省みず攻撃を継続するには強い意志が必要で、攻撃的な命令を続けるにはCWBでは毎ターンチェックが必要だ。今回はこのチェックが早々に失敗し、結果として南軍の攻撃も連携を欠くものとなってしまった。これもCWBならではの展開として、もどかしくはあっても他のウォーゲームでは見られない現実的な制約として興味深かった。

CWBの大野望 と言うより単なる妄想

>この事例を見て判る通り、現場レベルの指揮官はウォーゲームのプレイヤーと異なり戦場の状況に関して
>限定された情報しか持っておらず、しかもしばしば不正確な情報を持っていたりするのであった。
>プレイヤーが全情報をタイムリーに把握し、それに基づいた的確な指令を全部隊に命令し、それが遅滞なく
>実行されるなど、実際の戦場ではまったく在り得ないということを痛感させられる展開である。

と言うようなことを考えると、もし可能なら死ぬまでに一度で良いからこんなプレイをしてみたい。
CWBシリーズのルールを用いて、各プレイヤーは現場レベルの指揮官として自分の師団だけを指揮する。
現場レベルの指揮官とは別に総司令官を一人用意し、このプレイヤーはゲームマップを広げてプレイしている部屋には立ち入らず、各現場レベル指揮官からの伝達情報だけを材料に各現場司令官への命令をCWBの要領で自然語命令で与える。
という具合である。
CWBの通常のルールでは、命令の実行段階で遅れや齟齬はあるにせよ、少なくともプレイヤーは神の視点で盤上の戦況を正確に把握することができる。ところが上述のシステムでプレイすると、その情報把握が困難になってしまうのだ。
そして、戦況を正確に報告するもの、悲観的に報告するもの、自分に都合の悪いことは報告しないものなど、様々な現場指揮官がいる中で総指揮を取ることになる。これは物凄く面白いと思うのだがいかがだろうか?

次回へ

七日間戦争で最初の大きな会戦となったメカニクスビルは、戦術的には大きな損害を出した南軍の敗北だった。しかし、冒頭に述べたように北軍総司令官マクレランは、半島からの撤収を意図するようになり、結果としてリッチモンドは守られたのだ。
一方、メカニクスビルの戦いの結果を大いに不満と感じたボビー・リーは、翌27日に、改めて6個師団を投入した全面攻撃をポーターの第5軍団に向けて発動した。これがゲームのタイトルにもなっている「ゲインズミルの戦い」である。これは、南北戦争で南軍が実施した最大規模の攻勢でもある。
次回は、この戦いをCWBシリーズにてプレイしてみる予定だ。

しかし良く考えると

しかし良く考えると、企業のプロジェクトリーダーの仕事は、日常的にこういうことをやっているのに他ならない。すべての現場をリーダーが見て歩く訳には行かない以上、報告をベースに状況を判断し、時に権限を委譲してプロジェクト全体の進行を図ることになる。
その意味では軍隊の指揮もまた、プロジェクトリーダーの仕事に他ならないのかも知れない。