「もし徳」以来ですから3か月ぶり。まぁまぁのタイミングでしょうか。
日比谷ミッドタウンで見てきました。
一言で圧巻の面白さでした。
戊辰戦争ものだから見に行ったという意識でしたが、この映画では列藩同盟も官軍も両方とも悪役です。両者の間に挟まれた小藩、新発田藩の生き残り策の中で使い捨てられた決死隊の物語です。
使い捨てる側の大悪役の城代家老に阿部サダヲ。現場トップの決死隊長の入江が、最初は小出恵介かと思いきやキャストロールを見たら野村周平。
使い捨てられる側は、藩のために死ねる男として誰もが挙げる道場主に賀来賢人。使い捨ての罪人のメインキャストは山田孝之です。
新発田藩は戊辰戦争は官軍の勝ち戦と読んでおり、奥羽列藩同盟に仁義的に名を連ねましたが、本格的に兵を出して官軍とは衝突しないようにのらりくらりしています。
ついに切れた列藩同盟側が使者を送り込んできて、一両日中に出兵しなければ攻め込むぞと脅します。タイミング悪く官軍もちょうど新発田藩に入ってこようとし、両者が城下で鉢合わせするのを避けるため、俄かに官軍進路上の砦に決死隊を送り込んだというのです。
牢人十人、道場主の兵士郎、決死隊長の入江など、総勢15名くらいで数倍の官軍を止めようというのですから、端から無理。家老の意図は、ともかく城下での鉢合わせだけは避けて同盟軍が出て行ったら狼煙を挙げて抵抗を止めさせようというもの。
牢人メインの山田孝之は、酔っぱらった藩士に妻を手籠めにされて藩士を殺してしまったというものです。この妻が一人目のヒロイン、おさだで長井恵理。作中でも耳が聞こえないという設定ですが、ご本人も本物のの聾者だそうです
牢人が十人の中の紅一点、なつが二人目のヒロインで、松岡茉優が溺愛する鞘師里保。罪人という設定なので綺麗に着飾ったりしませんが、地味にイイ女を演じています。実は罪人のなかで唯一、またヒロインでも唯一生き残ります。
悪の老中の愛娘、かなが三人目のヒロインで横顔の完璧な美人で、杉本有美かと思いきや、なんと本当に新発田市出身の木竜麻生でした。「デリバリーお姉さんneo」から知っていますが、本当に綺麗になりました。
ヒロイン間の繋がりがあって、かなは実は決死隊長の入江の婚約者で、どうやって知ったか入江が守る砦までやってきます。そこで、牢人や兵士郎の藩のための活躍を見ます。そして、父の下に帰って決死隊の助命嘆願をするのですが、悪の老中は折角守り抜いた城下の平和を守るため官軍の要請に従って決死隊を自ら処分しに行きます。
決死隊の官軍相手のゲリラ戦は、かなり見応えがありますので戦術級ゲーマーにはお勧め。最後の兵士郎の家老相手の殺陣も壮絶です。兵士郎は多数の藩兵を押し返して老中に迫り、「刀を抜け、溝口!」と一騎撃ちを迫りますが、懐中から短銃を出した老中は容赦なく兵士郎を撃ち殺してしまいます。
助命嘆願が果たされなかったことでかなは自刃してしまいます。阿部サダヲが「なんでこんなことに?」と問うのですが、自業自得としか言いようがありません。
かなと一緒に城下へ戻ったなつは、かなから心づけの大判をもらって「なんであたしに」と首を傾げますが「先立つものもないことだし、くれるっていうならもらっておくよ」と懐中に。
この後、かなの自刃のシーンを挟んでなつはおさだを女郎屋で見つけて金を渡します。あんたの旦那は最後まであんたの所に帰ろうとしていたよと告げます。
こうして3人のヒロインが繋がって一抹の救いを感じさせて終劇となりました。
二時間半強ありましたが、長さを感じさせることなく、一気に終りまで見せる力を持った快作でした。