日本の超低金利政策の影響

インターネットが情報の国境を破壊したように、金融資本の移動もいまや国境を容易に越えるようになった。中流階級の資本は容易に越えられないのでダメージを受けるという説を、とある書籍で読んだが、最近の日本の投資ブームを見ると予想は外れており、中流階級の預貯金も外貨建て投資信託などに結構な勢いで流れ込んでいるようである。
いまや日本人の貯金は円ベースとは限らない‥という時代に既になったのかも知れない。
ところが、そうした新しい時代認識が依然として日本の金融当局などには不足しているように思う。日本の金利政策を論じるに当って、依然として国内実体経済への影響と、国内インフレへの懸念をベースに議論している。確かにこれらは無視できない。しかしながら、世界の先進国の中で異常な低金利を敷いていることによる円キャリートレードの誘発、貯蓄率の高い国民性から来る中流預貯金の外貨資産への流出を招き、結果として円の地位低下、中長期的な慢性の円安を招いていることについては原因自覚が薄いように思える。
今回も対ドルでの円高を見て、ますます自覚が薄まっているようだが、実際には円キャリートレード解消の一時的な振幅の後は対ユーロは元の水準に戻ってきており、円の国際通貨としての中期的な地位低下は続いていると思った方が良さそうだ。
円安は輸出産業に有利で国内景気に有利だと言う見方もあるが、資源小国日本が資源を輸入するに当っての地位低下も相当に深刻であり、実際にマグロの大トロの一番良いものは日本ではなく上海の寿司屋に流れるようになっていると言う。これが円が国際的に地位低下することの端的な影響の現われであり、これから日本に入ってくる資源の質低下を次々に我々は見ることになるかも知れない。ボジョレーヌーボーの初物を開けるパーティーも東京ではなく上海で行われることになり、そこに我々は日本のバブルの時代のデジャビューを見ることになるかも知れない。