ご存知2003年の宮部みゆきのベストセラー。
正直に言って第一部は読むのが辛かった。両親の離婚に悩む小学生の物語だ。全体を読み終わってみると、この第一部あってこそのストーリーだとわかるのだが‥。
自身の運命を変えるために幻界に入っていってからの冒険物語は一気に読ませる。1400ページを超える大作だが、第二部に入ってからはアッという間だった。クライマックスは、ゲド戦記などと同じ自己再発見の物語になっているが、そこにミツルというライヴァルがいることで幅が広がっている。圧巻と言って良いエンディングで不覚にも泣かされてしまった。
個人的には主人公のワタルよりもミツルの方が共感する部分があったかも知れない。自分の目的を明確に決め、それ以外のことは切り捨てて邁進する姿には思うところが多い。けれども、読み終わって考えてみると。一見、自分の目的を持って強そうに見えるミツルの生き方が本当に強いのかどうかは改めて考えさせられる。物語ではワタルが主人公として冒険を完遂するが、それをもってワタルが正しく、ミツルが誤っていたと単純に結論するものでもないような気がする。人は時に惑い、時に決然として生きていく。時にワタルのように、時にミツルのように生きていくのだと思う。
このタイミングで読み終えることができて良かったと思っている。
(入院先にて)