☆白い果実を読む

bqsfgame2014-07-14

国書刊行会ジェフリー・フォード世界幻想文学大賞受賞作です。
ネットで評判が良いのと、地元の図書館にあったのとで、急遽実現しました。
うーん、これは面白いです。
SF的な面白さではなく、格調高い幻想文学としての読み応えです。その意味では同じ賞を受賞した「拷問者の影」や「香水」と通じるものがあります。
あらすじ的な話しをするだけなら、独裁者が自らの記憶装置として構築した完全無欠都市に住む独裁者の腹心の観相学者の主人公が、近郊の村の白い果実盗難事件を捜査に行き、そこから奇妙な旅に巻き込まれる物語です。
上手く説明できないのですが、カフカの「城」との比較で議論されるなど、歴史に残りそうな格調の高い幻想文学です。
単に不思議が連続するだけでなく、人間とは、自由とは、社会とは、愛情とはなど、いろいろなことを考えさせる断片に富んでいます。
もっと評判になって良いのではないかと思いますが、そこは国書刊行会さんらしくさりげなく通向けに訳してしまって、ひっそりと図書館に眠っているという感じでしょうか。
幻想文学が好きな人は、是非とも地元の図書館を当ってみてください。そりゃ、買ってあげる方が親切と言うものですが‥(^_^;