☆人間の証明を読む

 森村誠一追悼第2弾です。図書館。

 「母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?」というフレーズに聞き覚えのある人は多いでしょう。映画「人間の証明」(1977年)のキャッチフレーズになったことで有名です。

 その原作ですが今回はじめて読みました。

 「高層の死角」もそうですが、これも本格ミステリーです。

 展望レストランに辿り着いて死んだ黒人。彼が呟いた「ストウハ」は、ストローハット(麦わら帽子)ではないかという推定から捜査が始まります。

 西城八十の冒頭の詩へと結びつき、被害者が「日本のキスミへ行く」と言っていたという事実にニューヨークのスラムで出会います。

 

>母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?

>ええ、夏、碓氷(うすい)から霧積(きりづみ)へゆくみちで、

>谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。

 

 詩との結びつきから、キスミは、霧積ではないかという推定に至ります。

 もう一つ別のドラ息子が薬中でひき逃げ事件を起こす事件との接点が。ドラ息子のセレブ母親が実は戦後動乱期に米軍黒人兵の日本妻だったのではないかという話しが浮上してきて俄然捜査は急迫します。

 そして、「人間の証明」というタイトルの意味は?

 なかなかに重厚な小説で、エンターテイメントとばかりは言いにくい側面もありますが、それでも日本ミステリー界の歴史に残る足跡であることは間違いありますまい。