○禁断の塔を読む

bqsfgame2005-04-27

ダーコーヴァー年代記を年代順に読んできたが、いよいよ本丸。「カリスタの石」から直接繋がっているストーリーだが重みが全然違う。
ララン、塔の掟、愛情、性愛、家系、評議会。ダーコーヴァーの文化と歴史、地球文明を背負って家族に入ったアンドリューとの文化的葛藤。独特のタッチと問題意識の異世界が濃密に描かれる。
単にファンタジーとしてなら「ストームクイーン」の方が華麗でドラマチックだが、ダーコーヴァー年代記らしさという意味ではこちらが真髄のような気がする。残念なのは、この作品に続く「魔法の都」と、そこへ合流してくるキャラたちを描いた「ゼンダラの館」が未訳のままになってしまっていること。次の翻訳対象として紹介されながら実現しなくなってしまっているだけに悔やまれる。
近年、創元推理文庫のSF部門の復刻は、すごく良いところをやってくれていて、火星シリーズ、キャプテンフューチャーシリーズはもちろん、単独の長編でも、子供の消えた惑星、黙示録3174年など通好みの傑作を出してくれている。そう言えばファファード&グレイマウザーのように新規巻き直して完訳を目指すものもある。ダーコーヴァーも期待したいところだが‥。