エア&アーマーは作戦級のゲームとしては珍しく、戦術級ゲーム的に様々なシナリオ設定を用意して同じマップ(作戦範囲)でいろいろな作戦を展開する作りになっている。
最初のシナリオは、「橋へのレース」で、ワルシャワ軍は1個師団、NATO軍は初期配置が西ドイツ旅団1個のみという最小規模のシナリオになっている。このゲームでは、フォーメーション単位で交互に活性化を行うのだが、先手は毎ターンのイニシアチブフェイズでランダムに決める。
これはやってみるまで気付かなかったのだが、実は1個ずつしかフォーメーションのないこのシナリオの状況では、事実上のフリップフロップ(プラドスがAHの「第三帝国」で用いたプレイヤーターンの先手後手が入れ替わることで連続してプレイヤーターンが起こり得るシステムのこと)になっている。このため、相手に連続して2回のアクションを起こされることを考えに入れた作戦行動が必要になる。したがって、予備を持っておくことが極めて重要。
シナリオの状況は、ワルシャワ軍がボード北端から進入しメイン川を渡河して南西端へ離脱することが目的。NATOはこれの阻止が目的である。西ドイツ旅団はメイン川の渡河点へと繋がる主要な高速道路の重要交差点に展開、ワルシャワ軍はこれを突破、もしくは迂回して目的を果たそうとする。全体は5ターンだが、第4ターンに南東からカナダ旅団が増援で入ってきて、ワルシャワがまだ渡河していなければ渡河点での水際防衛を、渡河していればその側面を攻撃、もしくは包囲捕捉して盤外への離脱阻止を狙うことになる。このシナリオでは敵の部隊を正面切って叩くことは必要なく、機動と迂回が重要なテーマになっている。
道路網を使った高速機動、重要な交差点を巡るフォーカスされた戦闘、かつてSPIの「ザネクストウォー」や「第五軍団の迎撃」で体験して衝撃を受けたWW1やWW2のウォーゲームとは全く違う次元の戦闘が此処にもあった。最初のシナリオにこうした機動要素に焦点のあるシナリオを持ってきたことにもデザイナーの現代戦に対する意見が伺えるように思う。
ゲームシステムという面でも、シナリオ設定と言う面でも、デザイナーの本題材に対する意見や視点が色濃く反映されており、こちらも意見を語りたくなる作品だと思う。戦闘要素にもう少し力点のある次のシナリオ(熊ワナ)までプレイしたところで一回まとめたいものだが‥。
参考までにスコアを書いておくと、
ワルシャワ:突破15点+撃破7点=22点
NATO:撃破16点+粉砕1点=17点
得点差5点まではドローなので、ギリギリではあるがドロー。