○天使の恥部を読む

bqsfgame2010-02-17

ラテンアメリカ文学シリーズ第四弾。
国書刊行会文学の冒険シリーズ。
原著は1979年、訳書は1989年。
マヌエル・プイグは、映画「ブエノスアイレス」など映像関係の方で有名。現代社会の希薄な人間関係への問題意識や、センセーショナルな性描写などで知られる。
映像とのリンケージの意識があってか、読みやすい長さの作品が多く、話題性があるのか翻訳も進んでいる。
本書も内容の陰鬱さにも関わらず読みやすく、割とスムースに終わりまでいった。
母と娘の人間関係、男と女の関係、アルゼンチンの政治問題などが語られるが、設定はオルタネートヒストリーのメキシコであったりして、SF性、スパイサスペンス性など様々な要素が盛り込まれている。
なんとなく「限りなく透明に近いブルー」あたりの感触に近く、70年代の現代文学らしい。
その一方でラテンアメリカ文学らしさと言うのはあまり感じなかった。