○ジャガーハンターを読む

bqsfgame2011-10-02

 近年になって中南米文学を読むようになったのだが、その文脈で出てきたのがSF作家ルーシャス・シェパード。
 どこかで聞いた名前だと思ったら、SFMで昔に読んだ「龍のグリオールに絵を描いた男」の作者。
 短編集でまとめて読んでみると、なるほど中南米色と戦争色が非常に強くて独特の世界を創っている人だ。そんな中では逆に架空世界譚であるグリオールの方が、シェパードにしては異色なのだと思った。
 表題作の「ジャガーハンター」は、中米を舞台にした老ジャガーハンターを描いた作品。雰囲気のある魅力的な短編だ。
 「メンゲレ」と「スペインの教訓」には、ナチスの残党の影が蠢いている。中南米ナチス残党の逃亡先としていろいろな噂のあった土地なのでナルホドと思う。
 「スペインの教訓」と「ある旅人の物語」の2つは、舞台こそ実在の土地だが、かなりSF色のある作品。テイスト的には、むしろホラーに近いだろうか。
 全体として見た時に、確かに中南米なのだがマジックリアリズムと言う感じは受けなかった。
 逆にグリオールは久しぶりに読んだが、こちらの間口が広がったのか昔は退屈だったが楽しく読めた。続編がSFMで訳出されているそうで、知らなかったのだが読んでみたいと思うようになった。