○ボロコーヴはミムジイを読む

bqsfgame2012-10-19

昔のハヤカワの銀背です。地元の図書館で発見。
ヘンリイ・カットナーは、マニアの間では評価の高い作家ですが、忘れられつつあります。残念なことです。
おおちがいは、ディックを思わせる現実崩壊短編。
幽霊ステーションは、コンピューターが精神病患者に影響されて精神病になると言う当時のコンピューター不信を思い起こさせる作品です。
第3のドアは本書中の白眉。悪魔との3つの契約のヴァリエーションですが、非常に気が利いています。悪魔を論理で騙したと信じる男が三番目のドアで迎える結末は?
トオンキイは時間迷子が作った未来テクノロジーを巡る笑えない騒動。
ヘンショーの吸血鬼は、実は視点が吸血鬼側にあるという昔ながらの吸血鬼譚。
ボロコーヴはミムジイは、鏡の国のアリスの一編から採ったタイトル。未来から漂着した玩具を子供たちが遊び始めて理解できない世界へと旅立ってしまう。
全体にSF黄金時代初期の懐かしいテイスト満載で、非常に洒落た手法が際立っている良い短編集です。
カットナーはもっと評価されて良いのになぁ。