レベルレイダースオンハイシーズのルールを読む(三回目)

ソロプレイの失敗を踏まえて読むと、ようやく見えてきました。どのルールが実際にプレイした時にはどのシチュエーションで、どの勝利条件を目指して運用されるのか、また別のどのルールと相互作用があるのかが理解できてやっと読むに耐えるようになったかと言う印象です。
これから読む人のために、概念に関するいくつかのイントロダクションをしておきましょう。
1:実は本ゲームは南北戦争の海戦ゲームではなく、南北戦争全体の戦略ゲームである。

これが一番大きな勘違いでした。海戦を詳述してあるものの、陸戦も含んだ戦略級ゲームだと言うのが意表を突いている所です。

2:1の直接の影響として、実は北軍の陸戦進撃をゲーム上で実施できるが、そこでは本ゲームの焦点である水上戦が何の影響もない。

これがソロプレイでの大きな間違いです。
北軍は、自軍支配下のエリアから陸路で接続する南軍支配エリアを強襲できます。陸路ですから、当然、水上艦は同伴できませんし、またする必要もありません。陸路で接してさえいれば、後は1ターンの強襲回数を制限する大砲マーカーを使用して宣言さえすれば攻撃できてしまいます。
これは陸戦なので、南軍に水上艦がいても関係ありません。水上艦は防御に寄与することすらなく、単に陥落したら退却しなければならないだけの存在です。
一方で不思議なのは、南軍に砲台があると、これは防御に資することになります。また、南軍ではリーやジャクソンなどの将軍がイベントカードとして存在し、これを公開することで陸戦時の修正として継続使用できます。
と言うことで、実は純然たる陸戦ができるし、またそれが北軍の侵攻計画上はむしろ重要でさえあります。此処が、「これは水上戦のゲームだ」と思い込んでしまって間違えた最大の部分です。結果として南軍として、砲艦を量産してミシシッピ河に浮かべるのですが、これが北軍の陸路による進撃に対しては何の防御にもならない‥(^_^; 逆に砲台は足しになるのですが、これは簡単には量産できません。で、これも不思議な点の一つで、砲艦より砲台の方が量産が難しいと言うのは本当でしょうか?

3:水上戦に関するディティールと、陸戦に関する処理のアンバランスが気になる。
総合的な戦略級ゲームとしては、上述のように陸戦に関する処理がアブストラクトに過ぎます。それだけでも違和感があるのですが、さらに水上戦についてはディティールが前例のない細かさなので、ますます違和感が強くなっています。特に「プライスオブフリーダム」と言う比較的バランスの良い総合ゲームを見た後なので、すごく気になります。
これだったら通商破壊戦だけにフォーカスした「シーデビルズ」の方がずっと良いゲームデザインなのではないかと思います。
BGGに投稿した「シェンノート最初の戦い」のレビューに書きましたが、ハイブリッドゲームシステムは一般的にスケールの違う両者の齟齬が問題になって上手く機能しません。このゲームはその典型例になっていて、水上戦を細かくやらせるのですが、そのアウトプットと総合戦略戦としての全体との相互関係が歪(いびつ)なように思います。ルールをきちんと把握した上でプレイしてみないと最終的な結論には早いのですが、かなり心配です。

4:ブロッケードランナーの比重が高い
本ゲームでは北軍は南軍のVPをマイナスにする必要があります。これは基本的に北軍が南軍の都市、要塞、港湾を占領することで実現します。対して南軍は、ブロッケードランナーで中立港から物資を輸入すること、襲撃船で北軍商船を攻撃することでVPを獲得できます。で、実際にプレイした印象だと前者のVPの方が大きい。「シーデビルズ」を先にプレイした先入観かも知れませんが、通商破壊戦の方が戦局に影響が大きかったように思っていたので意外でした。これだと、北軍による港湾封鎖の方が重要だと言う理解になります。ここらへんは南北戦争の海戦史をちゃんと勉強しないといけないと思うのですが、日本語には適切な資料がないので困っています。「セメス提督とアラバマ号」の洋書とか欲しいのですが、買っても読める自信がありません(笑)。それに封鎖戦略の意義を理解するには適切な資料選択でないような気もしますし。