三等兵さんが貸して下さった一冊。
と言うことで早めに読もうと長野出張に持参したら、帰り新宿に着く頃にちょうど読み終わりました。
ヒューゴー、ネビュラ、ローカスの三冠だというのですが各賞の打率記事で見た記憶がありません。調べたら長編部門ではなく、その下のノヴェラ部門での受賞でした。新書版250ページでは、長編基準に満たないのですね。初めて知りました。
ちょっととっつきにくい感じで始まりますが、リーダビリティは良いです。
非常にスタイリッシュなストーリーで、スタイリッシュなキャラクター造形で、スタイリッシュな叙述形式です。どこまでもカッコイイ作品です。なるほど、これは玄人受けしそうなのでネビュラと英国SF作家協会賞は非常に納得できます。
時間戦争を戦っているエージェンシーとガーデンの現場工作員であるブルーとレッドが接触して、互いに手紙をやりとりするというお話しです。基本、この手紙で物語は説明されていきます。
恋に落ちる二人、愛に囚われてしまう二人、相手のために命まで捨てようとするレッド、なぜ彼女はそこまでブルーに執着するのかは最後にきちんと説明されます。時間テーマでは時間の円環構造がしばしば登場しますが、本作もそこへ収斂します。きっとそうだろうなと思って読んでいくのですが、判っていても収斂すると感動するのはなぜなのでしょう。
完成度は異常に高く、炭素の完全結晶体のような作品です。それゆえに少しとっつきが悪いのは止むを得ないでしょうか。
また再読したいので、自分でも買おうか悩ましい所。オークションで安値で出てくればという感じでしょうか。